まほうのことば

小説の新人賞などに応募しています。本の話や創作の反省。黒田なぎさ

感想会の結果ふりかえり(第4期)

・去年から感想交換会をやっていたので、結果のまとめと振り返り。

 5月現在、講座はラスト手前の第10回を予定しているところだが、コロナの影響で開催が延期になっているので、少し早いですが振り返り。本当は、最終実作の提出後に公開予定だったが、講座がのびのびになって幹事が忘れそうなので公開。最終実作の執筆に影響が出そうな方は、回れ右です。また個人名の言及はほとんど控えています。

 

過去の感想会

 

 

どんなことやってるの

 だいたい月に一度、〆切(木曜日)の週末の土日祝いずれかで開催、1作品30分の講評会。はじめに作者から要望などをコメントして、あとはフリートーク。以前は読書会形式で参加者ひとりずつ講評していたが、参加者多数のため今はフリー。だいたい7時間くらいかかっている。前期も途中からスタート。

 

参加人数の推移

 図1.縦軸が人数、横軸が第何回目か、赤色のバーは初参加者。正しくは参加表明した人数なので、欠席などあり実際に参加した人数はこれより 2,3名くらい少ない。たいてい最初の時期が多くて、後半になると忙しくなってきて減ってくる傾向にあるが、今期はあまり減っていない。人数全体は、前の期(平均9名?)と比べるとかなり増えた。聴講生の方が常に1,2名いたのもありがたい。

 第9回はコロナの影響でリモートzoom開催。次に開催予定の第10回でドンと増えているが、コロナの影響もあってなかなか講座が開かれないので、唯一の懇親会的な役割になっているかもしれない。

 

 赤色のバー、初参加の方が最後までちょこちょこいたというのはありがたい。1回参加してもらって特効薬みたいに上達してもらいたいが、なかなかそうもいかないというか、これまでの作品を全部読んで、「あなたはここを伸ばしなさい or 直しなさい」とアドバイスするのは、かなり骨が折れる。

 また、途中初参加の方と常連の方の梗概を比べると、梗概のわかりやすさの点でだいぶ違っていたように思う。初参加の方は本当は歓迎しないといけないが、指摘が多めになってしまったかもしれない。ただ感想会常連の多くも、初回の方はかなりツッコミだらけだったと思うので、なんというか、申し訳ない。

 

結果①:梗概選出の回数

 以下、感想会に3回以上参加された方を『感想会参加者』とする。理由としては、この会は作品講評が主なので、能力がちょっと上がったかな、と思えるのは、だいたい3回くらい参加してからのような気がする。もちろん、もともとかなり上手い人も参加しているので、この結果がすべて感想会のおかげと言うつもりはない。(第1回や第2回で選出された人は、あきらかに感想会の影響はほとんどない)。ニワトリと卵の話になるが、まあ参考程度に。

 

下記、いきなりロコツな比較になってしまうが、いろいろ表現を考えた結果、簡潔な記述を求めるとこうなってしまったので、ご容赦願いたい。

 図2に梗概選出回数と人数をまとめた。右側のバーが感想会参加者(13 名)。赤色のバーが1回、濃い赤色が2回以上選出された受講生。第4期の講座生全体の人数を40人とした。(登録されているのは48名)。

 梗概が1回でも選出された人数で見ると、年間で1回以上選出された講座生は全部で20名(赤色と濃い赤色)。選出作品は30作品。そのうち感想会参加者が半分の10名。2回以上選出となると、その半分の5名になる。(余談だが、3回梗概選出は全体で3人のみ)

  
 絶対数で見ると、赤いバーは左右でほぼ同じだが、割合で見ると結構な数になる、と思う。選出された人数を、それぞれのバーの高さの人数で割った結果を選出率とすると、左側が37%、右側が77%となった。(2.08倍)。選出10名の中には元3期生が3人もいるが、それを除いてもそこそこな結果が出た。とりあえず感想会でボールを投げたらだいたい選出者にあたる。熱心な方々に集まってもらったということだろう。

(感想会の選出者 10名の内訳は、藍銅、遠野、揚羽、渡邊、安斉、稲田、武見、藤田、中野、黒田の10名)。

 

※追記 前期(3期)は、生徒数が48名(同じ)、選出作品が30作品、1回でも選出された人は16人だった。今期は多少、選出された人がばらけた模様。本当は、下記の得点で分散が見たいのだが、得点方法がまったく変わってしまったので比較ができない。

 

結果②:得点グラフの比較

 次は得点での比較を行う。図3に得点TOP15をまとめた。右側のバーが感想会参加者(13 名)。赤いバーの下からTOP5、TOP10、TOP15までの人数を示している。第9回までの得点表を見ると、得点TOP10の中に感想会参加者が5名、TOP15までみると、参加者が 10人まで入る。ただ10人まで入るのだが、おそらく次の第10回の講座の加点で順位が入れ替わり、15位の受講生(幹事)が転落すると思われるので、グラフでは9人にしている。 

 
 図2と同じように、TOP15までの人数を、そのバーの高さで割った割合は、左側が22%、感想会参加者で69%になった。(3.13倍)。実は、得点が高い=梗概選出されている、と等しいので、結果は図2とほとんど同じなのだが、なかには梗概選出されても実作を提出できなかった場合がある(0点)ので、こちらのほうが左右で差が出ている。TOP15というのは、ほぼ梗概選出→実作提出した人数に近い。

図3を、縦軸の上限を100%にして割合にすると図4になる。

 こちらの結果は、検定をしてもおそらく有意差が出る、と思う。(久しぶりに統計の本を引っ張り出したが、適当な例題が見つからなかった。z検定をしたら有意差はあったのだけど、おそらくt検定をしないといけない)。 

 

結果③:実作と最終結

 梗概の結果はわかった。では実作は? というと、実作の上手さをうまく評価するのが難しかったので、比較はやめておいた。また実作は、もともとの実力が顕著に出るので、あまり感想会の影響があるとも思えない。得点TOP5の顔ぶれを見てもそう感じる。(試しに、毎回の講座の得点1位と2位をカウントしてみたが、カオスになった)。

 またこのあと、最終実作にて最終候補者が選出され、年間優勝が決まるが、この結果にもあまり影響がないかもしれない。そもそも幹事がタイトルを取ったことがないのでそれ用のアドバイスが難しいし、うまい人は講座生より講師のアドバイスを聞いたほうが良いだろう。

 

考察

 結果的に、梗概の選出に少しは役に立てたよう、である。(もともと上手い人が偶然集まっても同じ結果になるのだが、手ごたえとしては、3人くらいには実際に効果があったと感じている)。幹事としては、しんどいスケジュールのなかで毎月の土日をつぶしてもらっているので、選出されると少し安心する。ただ、かけた時間に対してリターンが釣り合っているかはわからないが。

  ここで論文なら被験者にアンケートでも取って、自由記述の回答を紹介するのだが、当然そんなことはやってないので、以下は幹事の所感。

 実際に幹事がどんな講評をやっていたのか、と考えると、以下 まず ① 梗概のストーリー・設定が理解できるか ② 設定・ストーリーから梗概選出の可能性がどのくらいか、どの程度掘り下げているか ③ 実際に実作にするときのポイント・類似作品等、を重点的に考えていた気がする。

 実作については、思い返しても、梗概へのアドバイスは即効性があったと思うが、実作へのアドバイスは細かい指摘になりがちで、効き目が出てくるのは遠い将来という印象だった。もっと高い視点からのアドバイス(目標、弱点等)をするには、書く側も何回か続けて実作を提出しなければならない。また幹事のレベルがそこまでに達していないということもある。このあたりは今後の課題である。 

(ただ、細かい文章の指摘(人称、視点、文法など)ができるのは感想会の特徴だとは思っている)

  

当初の目的

 結果的にそこそこな効果が出たが、当初から数値目標を掲げていたわけはない。最初は、選出されなくてもいいから、講座に最後まで参加してもらうつもりで、継続性のために開催していた。もしかしたら効果があるかも、と実感したのは第6回か第7回で、初回に比べて劇的にうまくなった人が梗概選出されたときと、第8回の時点で、初回から参加している常連組がほぼ全員、梗概選出されたときだと思う。

 あと第5回の感想会で、得点が入った実作(自主提出含む)がドンドン講評の場に出てきて、かなり驚いた記憶がある。出てくる作品が全部おもしろくて恐ろしかった。

  

 デメリット

 もちろん、講座のなかには人づき合いが苦手という方もいるし、感想をもらうのが苦手という方もいるので、今年はあまり、幹事から積極的な勧誘はしなかった。ただ幹事から見て、梗概選出されてない方の中で、感想会で鍛えたら選出されそうだなという人は何人かいた。けれど、こういう講座内でコミュニティをつくることはかなりデリケートな問題だと思っているので、あまり積極的な宣伝はしていない。(外から見たら鬱陶しかったかもしれないが)

 また感想会の欠点もあって、まず時間がかなり犠牲になる。感想会自体の時間もそうだし、ほかの人の作品(10作品以上)も読まないといけない。また梗概に色々ツッコミが入るので、実作(特に自主提出)が書きにくくなる点もある。ツッコミが入ったら当然、梗概を見直さないといけないので、そのぶん書き始めるスタートが遅れるのである。スケジュールが厳しいこの講座では結構大きな欠点である。

 また、こういう生徒同士のスクラムを組んで取り組むのはどうなの? と思わなくもないが、高得点者を見ると、感想会への参加不参加関係なく、もともと何かしらのコミュニティやサークルに入っていたり、友人知人に原稿を見てもらっている人が多いように思った。

 

幹事をすることについて

 感想会自体のメリットはあると思うが、幹事をやるメリットはあまりない。次期に機会があるとしたら、幹事は持ち回りにしたほうが良いだろう。また現役受講生が幹事をするメリットもあまりなくて、作品の〆切と講座の内容を把握していることくらいか。また好き勝手に講評していると、自分も講評される側なので反撃をくらう。(実際に反撃をもらうわけではないが、講評中はつねに「指摘してるけど自分はそれができてるの?」がつきまとう)。逆に言うと、感想会で本当に好き勝手な講評はできないし、本当に読者の立場で講評することはまずできない。参加者がほとんど全員、書く側だからだ。その点はOBの方々のほうがメリットがある。

  今回は幹事の余裕がなさすぎたので、プロデュース的な面は難しかった。HPを開設しても良かったし、もっと偉いゲスト講師を呼んでも良かっただろう。そのあたりは次期、幹事する方に(OBでも)期待する。

 最後に、感想会は参加者がいないと成り立たないので、忙しい中でご参加くださった方々、活動をさせて頂いた講座の方々に感謝する。

 

以下、サムネ用。

f:id:dianachrestomanci:20200625220458p:plain

f:id:dianachrestomanci:20200625222253p:plain