創作反省
・ジャンル初挑戦なので、まだレベル1。自己評価30点くらい。
★準備段階の反省
① テーマが「得意なもの」となっていたのが、なぜか全然知らないタイムトラベルものを書こうとした。数年講座やっている弊害というか、時間が空いてしまい、初回はやはりちがうジャンルに手を出してしまいがち(で失敗する)。こういうときでないと勉強しないような気がしたので、やってみる。もしかしたら本当に時間ものが苦手なのかもしれないが、やってみたかったのでしょうがない。こういうチャレンジは後半になるほどしにくくなってくる。
もう少しものになればよかったが、厳しい。
② いろいろ複雑なプロットを組む予定だったが、難しかった。なかなか初稿をあげられず、ようやく書き出したのは締め切り前日?くらいからだったかもしれない。いろいろなパーツ・要素がからみあっている話を書くのはしんどいが、時間がいる。ふわふわ遊んでいる時間がどれだけ必要なのか、よくわかっていない。とりあえず初稿を挙げたほうが良かったかもしれない。
今年のテーマ、「過去作はあまりよまずにがんばろう」と思ったけど、初回から破っている。梗概に熱中している場合ではなく、実作をがんばるべきだが、やっぱりおもしろくない梗概を実作にしてもなあという感じはある。
③ 書きますか、どうですか。
本当はもう少し梗概を練ってから書きたいが、おそらく時間がない。何回も自殺するというこのこじらせパターンもいいかもしれない。(めちゃくちゃ痛いと思うのだけど、何をやっているのか)。
★創作上の反省
① なんかすごいDV男みたいに見えるが、30回以上は優しくしておいて、それでもどうにもならないから、「修造みたいに励ませばいけるのでは」という、なかばヤケの作戦。
最初はキャラクターの男女が逆だった。不思議な女の子がやってくる、という設定だったのだけど、ひっくりかえしたほうがおもしろそうだった。
② 本当は、「主人公が毎回なぜか死ぬ、それを男女二人で解決していく」というのにしたかった。「何十回も繰り返される文化祭前日、なぜか毎回ナツキが死ぬ(殺される)」とか。そちらのほうが、理不尽な感じ、ナツキの理不尽菅が出ていた。今回は自殺にしてしまった。それゆえのこじらせ感もあった。
③ いまはストーリー要素が少なく、演劇のふたり芝居みたいになっている。閉じられた環境で漫才するのも好きだが。
④ 時間的な矛盾
「何回もループしていたら、受験のテスト問題もわかるのでは?」。そういえば「リピート」にもありましたねそういうの。これは「問題がわかってても解けないくらいナツキがバカ」ということで……。
(有名大学の試験問題ともなると、マジで問題が何を言っているかわからないときがある。問題がわかってても解けない)
★ 感想会でのフィードバック
① ループ目的で死ぬのは苦しいので、だんだん自殺の方法はゆるい方法になっていくのでは?
→「自殺の理由」がだんだんどうでもいいものになっていくようにした
② 男の子は未来から来た? では本当の歴史(正史)をなぜ知らないのか
なぜ何回も死んでいるような女の子を未来に生かすようにするのか。
→ 「未来の正史ではナツキが死んでいて、ナツキがいたらすごい開発してくれそうなのにな~」
→「せや、歴史改変して、ナツキが死なないようにしたろ」→時間転移
③ 何回もループしているとき、ナツキとマサオミ以外の人間はどんどん入れ替わるようにして、「ループでずっと変わらない相手は運命の人」理論。
④ この話のメイン。
「なぜループしてしまうのか」
「なぜナツキはループに気づいていながらそれを言わなかったのか」
「どうやってループを抜けるのか」
→それらのオチが全部、「好きだったから」「恋愛」というのは、正直、作者的にはつまらない。ほかのことにしたい。
12/1 火
2
3
4
5
6日
7月
8火 このあたりから梗概スタート
9水
10木
11金
12土 このあたりひどかったね。
13日
14月
15火
感想会追記
・ストーリーが梗概後半の『ある日~』から始まり、かなり短くまとめられてしまったので、肝心のモノたちが活躍する部分が短いのがすこし残念。またドアとのバディものにするなら、ドアをもっと活躍させた方がよさそうで、ファミリアでの最終決戦も『人+ドア vs 人』にしたり、ドアの力をつかって戦うなどしたほうがよいかもしれない。人間の主要キャラ3人の人間愛憎ドラマが続くと、そちらのほうがおもしろくなりそうで、あまりモノが活躍しにくくなりそうである。モノ否定派閥(ヒト派)の敵も、じつは戦うときはモノを使役する、などの設定にした方が、モノがどんどん活躍させられる。最後は『人 vs 人とモノ vs モノ』にもできる。全体的に、シリーズの第1話感のような気がするので、最終回になりそうなくらいモノを出したほうがよいかもしれない。
・現代パートはとてもおもしろかったのだが、過去パートはどうかわからなかった。書いてあったかもしれないが、過去の歴史について、読者が知っている前提という感じはあった。ややうろ覚えだが、「正史はこんな感じで、ここの〇〇の行動をずらせば歴史改変が行われ、西暦がずれる」くらいの説明があっても良かったかもしれない。またどこかに説明があったかもしれないが、西暦をずらすために2000年前にもどる、というのは。(コロナをなくす数年前に戻ればいいのでは、とか)。
一人称の梗概は大変だよ、と言おうとしたが、こちらはわりとクリアしている印象。AIがハイテンションで喋っているので、あらすじを話してもそんなに違和感がないのかもしれない。(普通の人間キャラが「ぼくは◯◯!」とか言ってたらちょっと変だし、アニメの次回予告みたいになるね)。
広義のコメディということだが、もし選出を目指すなら、笑いだけでなく、「SFとしてちょっと新しい設定、ストーリー」などが必要になってくる。また個人的には笑いだけでなく、ちょっとせつなかったり感動させたり、別の感情をプラスすると、満足感が増すと思っている。(最後にAIくんが反応しなくなって、消えていなくなったと思ったら翌日に戻ってきたとか)。 ブラックコメディはどういう感情を持ってくればいいのか、ちょっとわからない。
オチは「AIに左右されない自由恋愛」。初回の講義で編集者の方が、「SFのラストが『一般的なモラル・常識』なのはちょっとどうなの」と言っていたが、少し似ている。オチが現代で常識的な価値観になると、すこし肩透かしをくらう。(「ちょっと変わったAIの概念」とあるが、ユーザーの意思を尊重したりユーザの意思に従うのは、AIとしては普通なのでは、というのもある。ロボット三原則でも「命令には服従」とあるし)
たとえばコズエさんはAIの指示に従わないので、画家を目指してるけどじつは絵がめっちゃへた、公務員とか接客業のほうが圧倒的に向いているのにね、とか。デート中もAIの推薦を無視して破天荒な行動をとる、家でもAIの推薦を完全無視している。サエナシ君にとって、それが気持ち悪い人に見えるのか、ワガママに見えるのかわからないが、こういうサエナシくんの考え方は、すこし未来的かもしれない。(AIの行動に従うのがこの世界の常識だから)。
『僕たちは彼女を気に入った』とあるが、AIはコズエさんのことがちょっと苦手、のほうがおもしろいかもしれない。「なんで僕たちの推薦に従わないの? サエナシくんが気に入ってるからいいけど」という。
『コズエさんはAIに従わない』コミックタイトルでありそう。
第5期感想交換会 第2回
開催日時:2020年11月22日(日)、23日(月祝)
時間:15:00 ~22:00、14:00~20:00
課題:「小説つばる「新人SF作家特集号」の依頼」
講評作品数:梗概16 実作7
参加者数:16名(欠席2名。ほか、聴講のみ2名)
日曜日が文フリであることをすっかり忘れる。参加者の予定が合わなかったので2日制となる。2グループ同時開催とはなんだったのか。
作品数23作(実施したのは21)はぶっちぎりで過去最高。両日に参加する人はいるかなと思ったが、さすがにいない。(あんまり講評ばかりしてもしょうがないが)。幹事は無事死亡。寝不足で文フリに突撃して、近くのホテルで開始。作品読むだけで3連休がおわる。実作はヤバイ。
今回のテーマは、毎年あるような「一般の方向けSF」テーマのような気がするが、自分は罠だと思っており、「一般向けSF」≠「よくあるSF」に陥り、よくある(おもしろくない)梗概になってしまう気がする。一般向け→ 身近な地名を使うとか、身近な道具を使うくらいでとっかかりやすさはクリアできるので、あとは深くて新しいSFを書くぐらいじゃないとまずい気がする。
・1日目 議事録
<テーマの選び方>
・今回の狙いは恐らく「一般向けのSF」を書く課題。
……かといって「よくあるSF」が良いとは限らない!
(過去の「一般向けSF」の課題で結局選ばれたのは「おもしろいSF」「新しいSF」が多かった https://school.genron.co.jp/works/sf/2018/subjects/5/ )
・要素が一般的・よくあるSFでも、切り口が新しい・面白いという書き方もできる。
・マニアックなネタ、「他のみんなが知らない世界」を書くのは、逆に強みになる。
・二万文字の短編……30分ドラマ・アニメくらい。
・ロボットの設定…形状や性能の理由・目的・運用ルールを考えておく(なぜ二足歩行? なぜしゃべる? 意識がある? 家庭用? 軍事用? など)
・ファンタジー/別ジャンルとSFの垣根は下がってきている印象。一般的な小説にも最近はSF要素が入ってきている。他ジャンルの梗概の記事なども参考に。
・ジャンル毎の展開の「お約束」「テンプレート」を把握しておくことは大事。ストーリー作りで迷った時の参考になる。本講座で迷っている暇はあまりない。
<物語の「謎」の仕込み方>
・終盤に明かそうと思っている謎やどんでん返しは、意外と読んでいると分かってしまう。
→先に明かしてしまって、更なるどんでん返しなど、もう一つの驚きを仕込むなどの方法がある。
→思い切って終盤にとっておくつもりだった「実はこの登場人物は……」というネタを早めに出してしまい、そこから動く感情やそれ故の葛藤を描く、というのも手。
→もしも正体を隠すのであれば徹底的に。
<話の流れ方>
・物語のなかで気持ちがどう動くか。
・短編では「その人の一生の思い出になるようなシーン」を切り取った方が盛り上がると言われている。
(バディもの例:ドラマの1エピソードよりも、コンビ結成編や解散の危機、最終回など)
・「キャラクターの履歴書を書きなさい」……傍観者になりがちなキャラクターに使ってみると良いかも。ただ、短編では要素を詰め込みすぎてしまいがちなのでほどほどに。
・ラストで新しい設定を出すことの難しさ(よほど効果的でないと△)
・起承転結の「転結」を「起」に持っていく方が良い場合もある。(※梗概を作る時には一度見返してみると良い)
(文責:吉羽善)
2日目
・梗概を一人称にすると、デメリットがあり、① ショートショートっぽく見え、実作を読んでみたいと思いにくい ② ひとりの視点で語るので、高い視点から展開を書きにくく、ストーリーが短めに感じる。
そのキャラの口調が特徴的などのメリットがない限り、避けたほうが無難。
・実作:作品の途中で視点が変わるときは、1行目に『Aさんは〇〇した。』と書くなど、名前をはっきり出して、視点が変わったことを明確にした方が親切。
・すべての講義で実作を出す必要はないし、〆切が短かったり長かったりするときもあるので、年間スケジュールを見直して、どの回に出すか計画を立てたほうが無難。(公募・イベントの原稿とも折り合いをつける)
★キャラクターの履歴書については
★スト-リーテンプレ、パターンについては
・ストーリーが梗概後半の『ある日~』から始まり、かなり短くまとめられてしまったので、肝心のモノたちが活躍する部分が短いのがすこし残念。またドアとのバディものにするなら、ドアをもっと活躍させた方がよさそうで、ファミリアでの最終決戦も『人+ドア vs 人』にしたり、ドアの力をつかって戦うなどしたほうが良いと思う。人間の主要キャラ3人の人間愛憎ドラマが続くと、そちらのほうがおもしろくなりそうで、あまりモノが活躍しにくくなりそうである。モノ否定派閥(ヒト派)の敵も、じつは戦うときはモノを使役する、などの設定にした方が、モノがどんどん活躍させられる。最後は『人 vs 人とモノ vs モノ』にもできる。全体的に、シリーズの第1話感のような気がするので、最終回になりそうなくらいモノを出したほうがよさそう。
サムネ用
小説のお勉強
⓪ プロット、ジャンル、題材(事件、背景、設定などの材料)、テーマ(読者に伝えたいメッセージ)
① ディザスターもの
災害系、侵略系、世界の変質(デスゲーム系、架空の世界)、疎外系(自分だけが〇〇される)、体の異変(カフカ)、異能、家族の異変、不審な出来事
① 主人公の周囲で異変が起きる→②A.自分からかかわる、B巻き込まれる
③異変がインフレしていく。④主人公は最終的に、異変を解決、逃亡に成功、異変が自然消滅、バッドエンド
② ラブコメディ(障害→のりこえ)
①ハンディキャップ、じつは吸血鬼とか、邪魔者ライバル、事件、距離と時間、物理的な壁、板挟み(選択)、ギャップとペナルティ、秘密とノルマ
③ヒーローもの
①仕事の依頼、トラブルが来る→障害を乗り越え
①スキル、超能力、アイテム、
④ バディもの
能力、権力(上司と部下)、権威、捕食関係(ヴァンパイア)、弱みや負い目、コンプレックス、持つ者と持たざる者
主観、宗教、好き嫌い、性格、派閥、
⑤ サクセスストーリー
夢と出会い、歩き出し、成功する。
発見、発明、優勝、記録、晴れ舞台、リベンジ、巨万の富、ささやかな夢
⑥ プロットを演出する
読者がきちんと理解できること。感動できること。
予告と中断。ワインに毒を入れる。人物Bがそのワインを……。
★書けないときの処方箋
・どこから始めていいかわからない
・次に何を書けばいいかわからない→絶対必要な部分、そのアイデアを100こ出す。
・自分が知らないことを、どう書いていいかわからない。→メインのアイデアでなければ、避けろ。先に別のシーンを書け。
①バリエーション。時代と場所を変える。
②文体を変える。
③ キャラを変える
自分から進んで行動するか、しないか。★積極的に人にかかわるか、物事にかかわるか。
人にはかかわるけど物事にはかかわらない→強制的に関わるような事件にする。
人にはかかわらないけど物事にはかかわる→バディものとかにして、強制的に人に関わる
④ ジャンルを変える。職業もの、ホラー
⑤ ホラーとマズローの欲求ピラミッド。生命、安全、所属と愛の欲求、これらを脅かされると、きついし怖い。
⑥ 視点を変える。それぞれの人物に共感できなくても、事件そのものに共感できる。(ジュラシック―パーク)
⑦伏線
①準備の伏線 (修行)②意外性の伏線、(どんでん返し)③サスペンス 状況や感情、時限爆弾、もめそうな感情 ④メッセージ、テーマ 繰り返し提示すること。
三体2
・1のあらすじを完ぺきに忘れていて、「智子」ってなんだっけ……状態だった。基礎物理学?が発展しないようになっている。
意外と、伏線をあまり貼らずに展開が続くことがある。
・200年後の世界が現れるが、なぜか新鮮でおもしろかった。
得意ジャンルを持つべきか? ジャンル別、参考にしたい過去の得点実作13
第5期生から「この講座でこういうジャンルは書いていいですか」という質問が多かったので、過去の得点された実作をジャンル別にまとめる。別にこのジャンルをまねろ、というわけではなく、「これがいけるならこのジャンルもいけるのでは?」と、自分の得意な作風を生かしてほしい。SF講座だからといって、今まで読んできた他ジャンルの小説、書いてきた得意技を捨てる必要はない。むしろ生かしたほうが評価されるだろう。
過去の記事
得意ジャンルを決めるメリット
① ネタが早く作れる。この講座は基本的に忙しいので、題材に迷っている時間があまりない。たとえばAIを主ジャンルにするなら、つぎは「AI × 仮想通貨」でいこうとか、「AI × 仮想世界」でいこうとか、組み合わせながら使えるし、設定を使いまわしたりできる。
② 繰り返すと精度が高くなる。いろんなジャンルに挑戦することも良いが、色々つまみぐいばかりしていると、経験がなく精度が落ちる。ある程度、そのジャンルの過去作品にも精通しないといけないし、知識がないと毎回勉強する必要がある。
デメリット:飽きられる可能性はあるので、毎回工夫は凝らすこと。もちろん、色々なものを試すことはいいし、自分が得意じゃないと思っていても、書いてみたら意外とウケた、ということもある。
・ジャンルの組み合わせ方
SFのサブジャンルで決めるなら、スペースオペラ、バイオSF,歴史改変、人工知能など。SF以外の、ギャグ、ミステリ、恋愛もの、歴史、ファンタジー、これらをかけ合わせても良い。ギャグなら梗概で3、4回笑わせるくらいの勢いで、「せつなさ」を書くのが得意なら、梗概を読んで少し泣かせるくらいの勢いで良いだろう。恋愛小説が得意なら梗概を読んで2回キュン死するくらい。
★ 基本的にここで紹介しているのは、すべて講座で加点・評価された実作である。また自分の好みもあってか、全体的にライトな作品が集まった。(ほかには歴史もの、外国もの、ライトノベル風などがある。参考作はあるので直接聞いてほしい)。 同じ作者は似ているジャンルを書くことが多いので、気に入った作者の他作品も参考にすると良い。
また自分のジャンル知識はかなり微妙なので、ジャンル判定にはわりと自信がない。こういう作品も評価されるんだなぁ、くらいに思ってほしい。
- 得意ジャンルを決めるメリット
- たくさん笑って少し泣ける、SFコメディ
- トリックは科学? SFミステリ
- 現代? 近未来? かぎりなく現実に近い技術
- 異世界、妖怪、ファンタジー!
- 子どもが主人公、ジュブナイルSF
- 原作を超えろ、思いっきりパロディ
- 誰かに刺さる、誰かのための小説
- 参考図書
たくさん笑って少し泣ける、SFコメディ
笑わせてなんぼであるが、個人的には少し泣けたり、深い設定やストーリーがあると満足感が増す。最終的にはSF設定をどんどん練りこんだり、思いもよらない展開まで行った方が評価されるかもしれない。
★ 『10文字以内で述べなさい。(ただし、句読点は含みません)』
進藤尚典(第3期 第4回「拘束下で書きなさい」)
「10文字しか話せない」というおかしな惑星を修学旅行中、恵は真美に愛の告白を決意する。すごく話しづらいなか、法律が変わり、とうとう5文字しか話せなくなってしまい……。セリフだけでなく、地の文まで制約に従っている百合コメディ。
★『AI、無人島を脱出できず』 進藤尚典
(第3期 第1回「AIあるいは仮想通貨を題材に書け」)
天才プログラマーにつくられたAIのポゾ。ニューヨークへと旅立った製作者を追いかけるため、ポゾは無人島の研究所からの脱出を目指す。ポゾはお金を稼ぐためにバーチャルユーチューバー『ポゾ子』になり……。
トリックは科学? SFミステリ
ミステリであれば、梗概の時点で、「なるほど」「謎が解けてすっきりした」くらいの印象があるほうがよい。
(第四期 第5回「シーンの切れ目に仕掛けのあるSF」)
近未来、太陽系内で作業員たちの死亡事故が次々と発生する。共通点は、死亡とほぼ同時刻に、遠く離れた火星で被害者たちの持ち物が破裂したこと。これらは単なる偶然なのか?
(第四期 第2回「読んでいて“あつい”と感じるお話」
半日前に殺された巻上マリは、気がつくと自分が幽霊になっていた。同じ幽霊である『先生』が言うには、幽霊は人間に触れることで熱を奪うことができるという。マリは自分を殺したと思われる男に復讐しようとするが……。
現代? 近未来? かぎりなく現実に近い技術
職業もの、お仕事ものなどが多い印象。しかし現代の技術なので、SF的な「ハッとする驚き・おもしろさ」を出すのはわりと大変で、技術がいりそう。
★ 『ギークに銃はいらない』 斧田 小夜
(第3期 第5回「来たるべき読者のための「初めてのSF」)
銃なんかなくたって、俺たちは世界を殺せる。俺たちは人工衛星を落とすことだってできるし、インターネットも簡単に殺せる。
高校生でいじめられっ子のディランと痩せっぽちのジェシーは、シリコンバレー近郊のベイエリアで、ギークにあこがれていた。ある日、ふたりはDynに対する大規模DDoS攻撃によって、インターネットが死ぬのを目撃する。彼らは自分たちで学校のネットワーク、監視カメラをジャックしようとするが……。
作者は第3回ゲンロンSF新人賞優秀賞受賞。ほかに『自己をめぐる嗣焼つぐやき梨子りこの奔走』『酔来酔去』など。
★『FLIX!!』 東京 ニトロ
(第4期 第3回 「強く正しいヒーロー、あるいはヒロインの物語」)
レンタルビデオ「フリックス」京成さくら店で、コギャルバイトの水上マミは驚愕した。高さ3m近くある赤いロボットが入店し、自分が浪人生バイトの灘くんだと名乗ったからだ。そこにあったVHSには、外銀河連合からのメッセージがあり、さくら市に来た感染型生命体を倒すために、灘くんをロボットにしたらしいが……。
作者は他に、同系統の『ら・ら・ら・インターネット』、パニックSF『渦を追う』など。
異世界、妖怪、ファンタジー!
SFとファンタジーはわりと親和性がある、らしい。なんでもありというのは良くないが、その現象、その設定に、「その世界で成り立っている理論、きちんとした設定」があればいいかもしれない。
(第4回ゲンロンSF新人賞 優秀賞)
亨志郎は病気の妹のために目の神社を訪れ、「めめ」と書かれた絵馬をみつける。そこで亨志郎は、不思議な少女「李」に旅館に案内される。迎えてくれたのは、目が4つある番頭、目がびっしりとならぶ障子、そして、「李」の腕には大量の目がついていた。
最終実作で申し訳ないが、こちらしかないのでご容赦を。作者の他の実作は、『蛇女の舌の熱さを』、『ぬっぺっぽうに愛をこめて』、『家庭内枕返し』『彼らが焦がれ描いた仙境』(いずれも非公開、得点実作)。どういうジャンルのものを書いてきたか、なんとなくわかるタイトル群。
(第3回ゲンロンSF新人賞受賞作(大賞))
その群れは、多数の女とたった一人の「父」から成っていた。「父」は女とちがい、全身を分厚い毛皮に覆い、頭上には枝角を冠のようにいただいていた。13歳の少女ハイラはあるとき、自分の群れの「父」ではない、若い男の姿を見る……。(amazonより)
最終実作で申し訳ないが。 ゲンロン創作講座の提出版は、『父たちの荒野』。ほか同作者の提出作は『ちいさな夜警』、『いとしき我が子』。
子どもが主人公、ジュブナイルSF
子ども向けのSF作品で、この講座の評価を得るのは大変だが、やってみても良いかもしれない。(子ども向けだとどうしても、「ハッとするSF設定」などが作りにくい)。また子どもを主人公にした場合、「社会を変える」など大きなオチをつけるのが難しいので、ドラえもんのようなすごいアイテムを持たせたり、事件を小さくしたり、工夫する必要がある。
(第四期 第9回「20世紀までに作られた絵画・美術作品」)
少女マヤは、砂浜がひろがる無人の惑星で、家族とともに幸せな生活を送っていた。母親のエル、父親のキース、弟のパウル。ある日マヤは宇宙船のライブラリで、この惑星の秘密を知る。
こちらは子どもが主人公だが、ジュブナイル、というわけでもない。子ども向けという意味では『いつの日か、空に。 ~ミッション・スペースキャンプ~』のほうかもしれない。作者のほかの作品には、地球のOLが「生物化している医療機器の子ども」を育てる『マイ・ディア・ラーバ』(非公開)などがある。
★『そら駆ける釣りケーキ』 進藤尚典
(第三期 第5回「来たるべき読者のための「初めてのSF」)
小学4年生のマサルは、ケーキ屋の息子であるヒサシとともに、ある日うら庭で宇宙船を見つける。そこを秘密基地として遊んでいるうちに、ふたりは宇宙船で異星に飛ばされてしまう。その惑星でとれる魚は、ケーキのように甘い味がして……。
子どものころの自由な想像がつまった作品。秘密基地にトイレがあるすばらしさ。
原作を超えろ、思いっきりパロディ
原作が有名である場合、パロディ商業作品も既存で山のようにあるので、それらを超えるのはなかなか大変である。どの作品に焦点を当てるかも重要。
(第三期 第4回「拘束下で書きなさい」)
「吾輩は鬼である。角はまだ無い。吾輩の主人は滅多に勉強しない。身分は女子高生だそうだ」
なぜか女子高生の間で、肩に鬼を乗せるのが流行っている世界。「『吾輩は猫である』の第一話全文を模倣して書くこと」を制約としたパロディ。くしゃみ先生がもし女子高生だったら? と思うと笑える。
(第四期 第7回「取材してお話を書こう」)
変わり者で嫌われ者のアンドウは、大学の展覧会で落語を披露することにした。しかしそれは、アンドロイドに故人の噺家を投影したもので、噺は「らくだ」だった。「らくだ」のあらすじは、嫌われ者だった男(らくだ)の死体を、皆がこぞっていじりあうというストーリーで……。
パロディではないが、実際の落語の話し方を踏襲している。
誰かに刺さる、誰かのための小説
ある特定の層(?)に刺さる作品。下記はアニメ雑誌とかに載っていそうな作品だが、とくに編集者ゲストの方は、「ターゲット読者層がはっきりしている作品」に弱い、という印象がある。どこに向けて売ればいいかわかりやすいというのがあるかもしれない。ハマっているものなどがあればそれを題材にすると良い。(なぜかアイドル系が多い気がするが……)。進藤尚典『推しの三原則』や、斧田小夜『自己をめぐる嗣焼つぐやき梨子りこの奔走』など。
(第四期 第5回「シーンの切れ目に仕掛けのあるSF」)
来本はある日、ダイビングを終えた後に、ケータイの待ち受け画像が変わっていることに気がつく。推しキャラの名前でググっても、検索結果はゼロ。実家の部屋からはフィギュアがすべて消えていた。来本はダイビングをすることで、推しのいない世界線に飛び込んでいた――。
ほか、同作者は、オフィーリアのあの絵画があるものに見えるという着想から来た『Plutonic? Plastic!』など。
参考図書
サムネ用
サムネ用
第5期感想交換会 第1回
開催日時:2020年10月18日(日) 晴れ
開始時間:13:00 終了時間:22:30
課題:「旬のネタでSFを書く」
講評作品数:19(梗概)
参加者数:20名(ほか、聴講のみ4名くらい)
第5期1回目の感想会。
19 作。当日は何人か欠席するだろうと油断していたら、全員来てしまって時間配分をまちがえる。遠隔からテキストチャットで参加する人も多く、zoomの力はすごいと思った。(会議室開催だったら確実に欠席になっていた)。普段はあまり事前に感想メモを作らないが、今回はさすがに作った。梗概を読むのは楽だが、メモをとるのがかなりしんどい。
初回から指摘をとばしていったかもしれないが、4カ月くらいしたら、全員が超強くなって幹事が置いていかれている未来が見えるので、がんばってほしい。個人的には、slackのアーカイブ録画で復習することもかなり勉強になる。
初回から2グループ制にするわけにもいかなかったが、次回からは実作も加わり、2グループ同時開催になるかもしれない。その場合、自分はzoomを2つひらいてハシゴするのだろうか。
以下、参加者の方に書いて頂いたイベントレポート。
単純な記録のつもりで書いて頂いたのだけど、思ったより良いまとめになっていて驚きです。(もっと雑感みたいなものを想像していた)
<印象に残った指摘>
・梗概がショートショートのように書かれていると、実作を読んでみたいと思われづらい(梗概でじゅうぶんと思われてしまう)
・梗概に出てくるキャラクターが多いのに、名字しか書かれておらず混乱する
⇒わかりやすい名前にする、性別を明記するなど、工夫するとよい。
・2万字にまとまるか、という観点は必要(一生懸命設定を作っても活かすことができない)
・梗概であっても、ラストにつながる伏線は書いておかないといけない(ラストが唐突に思える)
・得意分野で攻めるのがよい(毎回ちがうジャンルで書くようだと、毎回ゼロからのスタートになってしまう)・コメディ調にして、SF考証のハードルを低くするのもひとつの手
・タイムスリップものなど、手垢のついたネタは評価が厳しくなることを覚悟すべき
・専門知識が書けると強みになる(専門家が周りにいれば聞くこと)
・子供を主人公にすると、世界を救うなど力が必要なストーリーにしづらい・リアリティのレベルを作品内で揃えるよう注意(コメディとシリアスでもちがってくる)
・旬の出来事に対して、作者が傍観者になるのでなく、作者がどう感じたか伝わってくるとよい
<講座を受けるにあたって>
・選ばれる梗概を書く技術と、点数をもらえる実作を書く技術は別物。
・梗概が選ばれなくても実作は書いたほうが良い(梗概、実作どちらも中途半端にならないなら、という前提での話)
(文責:田場狩)
・前回書いた、梗概の書き方記事。実際に自分で梗概を書いてみて、振り返ることもあると思う。 過去の選ばれた梗概のなにが優れているのか、1つ1つの文が何気なく置かれているように見えて、じつは計算されている(ときもある)。梗概を読んで、「おもしろいな」と思った瞬間はどこか。なぜその1文で「おもしろい」と思ったのか。なぜその設定の文はその場所に置かれているのか。この文がなかったら梗概はどうなるか。
★冒頭のSF辞典。講座で勝つには早く得意ジャンルを決めるといい。サブジャンルで決めるならこちら。
★下は 2013年刊行で絶版に近く、内容もかぶっているが、個人的には「商業作品の発行年表」がありがたい。ジャンルごとの商業作品の紹介も多く、個人的にこちらのほうが好き。