梗概選出のしくみと、年間スケジュールと目標
まとめ
・年々、梗概を提出する受講生は増加しているが、年間で選出される梗概の数は増えていないので(むしろ減っている)、「選出」よりも「AB評価」を見たほうが無難か。
・最終的には実作勝負になるので、実作も練習しておこう
・自分の年間の目標をざっくり持っておくと、モチベが持続しやすい。途方に暮れるときもあるが。
過去の記事
梗概選出の仕組み
今期の審査プロセスはどうなるかわからないが、従来は審査員3名それぞれが、すべての梗概作品にA、B評価をつけ、評価の数で選出梗概を3~4つを決める。
3人 Aの梗概:ほぼ確実に選出
2人 Aの梗概:選出されるか微妙なライン
1人 Aの梗概:選出されるときもある。(その審査員のイチオシの梗概など)
厳密には違うが、40作の梗概があったとして、3、4位以内に入ったものが選ばれると考えて良い。40作のうち3、4作、選出率は10%である。
講座スケジュール:今期は去年よりチャンスが少ない
今年のスケジュールを見ると、梗概選出は7回のみである。(去年までは9回あった)。
1回で3~4作品が選ばれるので、単純計算で最大、年間22作品くらいが選ばれる。(もしかしたら今期から増えるかもしれないが)
受講生全体40人だとすると、およそ半分の人が、年間で絶対に一度も選ばれない。うまい人は何度も選出されると思われるので、半分以上の人が厳しくなる。
年間の梗概選出率はいくらか
第4期は1年間で30作品が選出され、一度でも選出された受講生は20名だった。
1回選出が11人、2回選出が5人、3回選出が3人。
受講生全体が40名だとすると、やはり選出率は50%。(この選出された中には、初心者の方もいる)。別に実力が3位以内に入っていないといけないわけではなく、アイデアがおもしろいと、初心者の方でもわりとあっさり選ばれることがよくある。特に編集者さんや作家の方が「これすごく刺さった。超好き」とかの感想だと、オススメされて選ばれることはよくある。(自分もある。年間5、6本くらいは、1人の審査員だけのオススメで選ばれる)ので、初心者の方も自信をなくさないようにしよう。
しかし自分の梗概を見て、40作の梗概のなかで、「おっ、おもしろい」「新しい」と思われそうかどうか。常に他人と比較しろとは言わないが、頭に入れておいて損はない数値である。
また、梗概を提出する生徒の数は毎年増加傾向にあるが、「選出される数」は増えておらず、むしろ年間で減ってしまっている。競争が激しくなりすぎているので、「選出」はあまり気にせず「AB評価」を見たほうが無難かもしれない。
昨年、最終選考に残った人は、選出2回が3名、1回が2名、0回が2名だった。が、おそらくこれもだんだん崩れてくる気がしている。今期はそもそも選ばれる数が減っているので……。
梗概選出がすべてか
煽っておいてなんだが、梗概選出がすべてというわけでもない。高レベルになってくると、最終的に争うのはやはり実作の完成度になるからだ。
だがこう考えてしまうと、梗概づくりをなまけてしまうような気がするので、やはり梗概は大事である。
個人的に、梗概選出は多少、運がからむと思っている。2つAで選ばれないときもあるし、1つAで選ばれるときもある。ただ、AやBなどの「評価自体」はあまり運が絡まないと思っている。まずはひとつBをもらう、というのも目標にしてもいい。(評価基準がさっぱりわからない、相性の悪い先生もよくいるが……)
また、上手い人の中には、梗概の評価をまったく気にしない人もいる。梗概が選出されなかろうが、評価が悪かろうが、ゴーイングマイウェイで実作を書く。(書くのが好きだからかもしれない)。この講座は、毎月勝ち負けが決まるので、1回の評価に一喜一憂するのも考えものである。たくさんの勝負に挑む人は、たくさん勝って、たくさん負けるので、長期的に見て目の前の結果に一喜一憂しないことがある。 (ただ、初心者の方は、講評からの反省やフィードバックくらいはした方が良いと思うが……)
しかし、評価を気にしながら書くと、まったくうまく書けない、という人もいる。 矛盾しているかもしれないが、書くことが好きな人は、評価など気にせず自分の好きなものを書くといいかもしれない。
関係ないけど、主任講師のSFコラムを集めた文庫。目標?は、その年刊行されたSF作品すべてをレビューすること。各作品ごとに筆者のおすすめ度(★5つ)評価が書かれている。各作品のあらすじやおすすめポイントが書かれていて、結構勉強になった。
余談:梗概と実作、どちらをがんばるか
この講座は基本的に、とても忙しい。なので、あれもこれもとやっていると、どっちつかずな結果になりがちである。(強い人はだいたい書くのがとても早いけれど)
梗概には梗概を書く能力がいるし、実作には実作を書く能力が必要で、両者はわりと別物の感じがある。梗概ばかり書いていると、いざ選出されたときに実作が書きにくいだろう。書きたい人は実作をどんどん書くと良い。また、おろそかになりがちだが、小説のハウツー本やSF作品、過去の受講生の作品を読むことも、りっぱな勉強である。
受講生の作品を読むかどうか。梗概を全部読むかどうか問題だが、時間にもよるが、なるべく読んで、「この梗概がSF的に面白いので評価されそう」という予想をたて、講座の結果と比較してみると、SF的価値観が磨かれるかもしれない。なぜかというと、「この作品、すごく感動したし共感したしおもしろそうだけど、SFとして評価が高いかどうかはまた別問題」だからである。
また、実作は、選出された梗概の実作くらいは、講座テキストだと思って読もう。テキストを読まずに授業を受けるのは厳しい。自主提出実作は、気になっている作者だけでもいい。
自分だけの目標を持つ
話を元に戻して、梗概選出が難しいならどうすればいいの、という話だが、自分だけの目標を持つといいかもしれない。受講生を指導している身としては、全員に優勝してもらいたいが、それは難しい。40人受講生がいても、優勝できるのはひとりなので、それぞれの目標を持った方がよい。あんまり高い目標を掲げるときついので、小さなステップを刻んだほうがいいだろう。
目標を決める理由は、あまりにも高い目標を掲げてモチベが下がるのを防ぐためと、途中で自信をなくしたときに再目標をつくるため、やっぱりモチベの維持である。
★よくメンタルトレーニングの本では、下記のように目標とスケジュールを決めろと言う。
① 自分が今期の講座1年間でどうなりたいか
② ↑ の理想の自分と、今現在の自分との、能力の差はどのくらいか。
③ ①を達成するために、後から検証可能な、具体的な数値目標。
④ ③を達成するために、年間でどのようなことをすればよいか。
(1か月ごとのスケジュール)
⑤ 自分のいまの能力と照らし合わせながら、①~④を更新する。
⑥ 講座序盤、中盤、終盤で、①の目標が達成できそうか、振り返る。難しそうなら再度、目標を設定しなおす。
何度も言うが、評価や目標を気にしだすとうまく書けない人もいる。
評価がなくてモチベーションが下がりそうなとき、目標を見失いそうになったときくらいに振り返る、くらいが良いかもしれない。
ざっくりとした目安と例
目標とスケジュールを書いたら、誰かに添削してもらうのも良い。もちろん個人の実力や執筆ペースはばらばらなので、自分に合わせて書くと良い。
★ 初級者
① なりたい自分:小説を書いてみたい。 応募、1次選考に通るくらいになりたい。
自分の得意ジャンルを決めたい。SFを知りたい。
② 今の実力:小説を書いたことはほぼないが、好きな読書ジャンルはある。
③ 具体的な数値目標
・梗概選出1回、もしくはB評価2個以上
・ 実作提出、7,000字1回、11,000字1回、20,000字1回
・最終実作で40,000字提出する
④以下、具体的なスケジュール
★梗概審査ありの回
9/24 初回講座
★① 10/22 1-3 のあいだにSF小説、小説ハウツー本を読む。
★2 11/26 梗概はできるだけ提出する。
★3 12/22 書きたいジャンルを定める
★4 1/28 1-3の間に実作(7,000字前後)を提出
★5 2/25 4-5の間に実作(11,000字前後を提出。この辺りまでに梗概の評価を上げたい
●6 3/25 5と7の間に20,000字くらい書いてみる
★7 4/22
★8 5/27 最終実作(40,000字)を書きはじめる
●9 6/24 最終実作の梗概提出
●7月下 最終実作〆切
●8/20 最終講評会
★ 中級者
① なりたい自分:新人賞の最終選考くらいまでに残りたい
② 今の実力:公募経験あり。1、2次通過経験あり
SF小説の経験はあまりないが、書くほうで得意ジャンルはある。
③具体的な目標
・梗概選出1~2回、もしくはそれに準ずる評価
・実作提出3回以上(最終実作のぞく)
・実作の自主提出で点数を1度以上とる(梗概だけでなく、実作の実力を磨く)
・最終実作で最終候補入り
④以下、具体的なスケジュール