まほうのことば

小説の新人賞などに応募しています。本の話や創作の反省。黒田なぎさ

第5期感想交換会 第1回

 

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開催日時:2020年10月18日(日) 晴れ
開始時間:13:00  終了時間:22:30
課題:「旬のネタでSFを書く」
講評作品数:19(梗概)
参加者数:20名(ほか、聴講のみ4名くらい)

 

第5期1回目の感想会。

19 作。当日は何人か欠席するだろうと油断していたら、全員来てしまって時間配分をまちがえる。遠隔からテキストチャットで参加する人も多く、zoomの力はすごいと思った。(会議室開催だったら確実に欠席になっていた)。普段はあまり事前に感想メモを作らないが、今回はさすがに作った。梗概を読むのは楽だが、メモをとるのがかなりしんどい。

初回から指摘をとばしていったかもしれないが、4カ月くらいしたら、全員が超強くなって幹事が置いていかれている未来が見えるので、がんばってほしい。個人的には、slackのアーカイブ録画で復習することもかなり勉強になる。

 

初回から2グループ制にするわけにもいかなかったが、次回からは実作も加わり、2グループ同時開催になるかもしれない。その場合、自分はzoomを2つひらいてハシゴするのだろうか。

 

 

以下、参加者の方に書いて頂いたイベントレポート。

単純な記録のつもりで書いて頂いたのだけど、思ったより良いまとめになっていて驚きです。(もっと雑感みたいなものを想像していた)

 

<印象に残った指摘>

 

・梗概がショートショートのように書かれていると、実作を読んでみたいと思われづらい(梗概でじゅうぶんと思われてしまう)
・梗概に出てくるキャラクターが多いのに、名字しか書かれておらず混乱する
 ⇒わかりやすい名前にする、性別を明記するなど、工夫するとよい。

 

・2万字にまとまるか、という観点は必要(一生懸命設定を作っても活かすことができない)
・梗概であっても、ラストにつながる伏線は書いておかないといけない(ラストが唐突に思える)

・得意分野で攻めるのがよい(毎回ちがうジャンルで書くようだと、毎回ゼロからのスタートになってしまう)

・コメディ調にして、SF考証のハードルを低くするのもひとつの手
・タイムスリップものなど、手垢のついたネタは評価が厳しくなることを覚悟すべき

 

・専門知識が書けると強みになる(専門家が周りにいれば聞くこと)
・子供を主人公にすると、世界を救うなど力が必要なストーリーにしづらい

・リアリティのレベルを作品内で揃えるよう注意(コメディとシリアスでもちがってくる)
・旬の出来事に対して、作者が傍観者になるのでなく、作者がどう感じたか伝わってくるとよい

 

<講座を受けるにあたって>
・選ばれる梗概を書く技術と、点数をもらえる実作を書く技術は別物。
・梗概が選ばれなくても実作は書いたほうが良い(梗概、実作どちらも中途半端にならないなら、という前提での話)

 

(文責:田場狩)

 

 

・前回書いた、梗概の書き方記事。実際に自分で梗概を書いてみて、振り返ることもあると思う。 過去の選ばれた梗概のなにが優れているのか、1つ1つの文が何気なく置かれているように見えて、じつは計算されている(ときもある)。梗概を読んで、「おもしろいな」と思った瞬間はどこか。なぜその1文で「おもしろい」と思ったのか。なぜその設定の文はその場所に置かれているのか。この文がなかったら梗概はどうなるか。

 

 

 

★冒頭のSF辞典。講座で勝つには早く得意ジャンルを決めるといい。サブジャンルで決めるならこちら。

 

 

★下は 2013年刊行で絶版に近く、内容もかぶっているが、個人的には「商業作品の発行年表」がありがたい。ジャンルごとの商業作品の紹介も多く、個人的にこちらのほうが好き。

クリエイターのためのSF大事典

クリエイターのためのSF大事典

  • 発売日: 2013/01/22
  • メディア: 単行本
 

梗概選出のしくみと、年間スケジュールと目標

まとめ

 

・年々、梗概を提出する受講生は増加しているが、年間で選出される梗概の数は増えていないので(むしろ減っている)、「選出」よりも「AB評価」を見たほうが無難か。

 

・最終的には実作勝負になるので、実作も練習しておこう

 

・自分の年間の目標をざっくり持っておくと、モチベが持続しやすい。途方に暮れるときもあるが。

 

 

 

 過去の記事

chrestomanci.hateblo.jp

 

 

梗概選出の仕組み

今期の審査プロセスはどうなるかわからないが、従来は審査員3名それぞれが、すべての梗概作品にA、B評価をつけ、評価の数で選出梗概を3~4つを決める。

3人 Aの梗概:ほぼ確実に選出

2人 Aの梗概:選出されるか微妙なライン

1人 Aの梗概:選出されるときもある。(その審査員のイチオシの梗概など)

 

厳密には違うが、40作の梗概があったとして、3、4位以内に入ったものが選ばれると考えて良い。40作のうち3、4作、選出率は10%である。

 

 

講座スケジュール:今期は去年よりチャンスが少ない

今年のスケジュールを見ると、梗概選出は7回のみである。(去年までは9回あった)。

1回で3~4作品が選ばれるので、単純計算で最大、年間22作品くらいが選ばれる。(もしかしたら今期から増えるかもしれないが)

受講生全体40人だとすると、およそ半分の人が、年間で絶対に一度も選ばれない。うまい人は何度も選出されると思われるので、半分以上の人が厳しくなる。

 

 

年間の梗概選出率はいくらか

第4期は1年間で30作品が選出され、一度でも選出された受講生は20名だった。

1回選出が11人、2回選出が5人、3回選出が3人。

受講生全体が40名だとすると、やはり選出率は50%。(この選出された中には、初心者の方もいる)。別に実力が3位以内に入っていないといけないわけではなく、アイデアがおもしろいと、初心者の方でもわりとあっさり選ばれることがよくある。特に編集者さんや作家の方が「これすごく刺さった。超好き」とかの感想だと、オススメされて選ばれることはよくある。(自分もある。年間5、6本くらいは、1人の審査員だけのオススメで選ばれる)ので、初心者の方も自信をなくさないようにしよう。

しかし自分の梗概を見て、40作の梗概のなかで、「おっ、おもしろい」「新しい」と思われそうかどうか。常に他人と比較しろとは言わないが、頭に入れておいて損はない数値である。

また、梗概を提出する生徒の数は毎年増加傾向にあるが、「選出される数」は増えておらず、むしろ年間で減ってしまっている。競争が激しくなりすぎているので、「選出」はあまり気にせず「AB評価」を見たほうが無難かもしれない。

昨年、最終選考に残った人は、選出2回が3名、1回が2名、0回が2名だった。が、おそらくこれもだんだん崩れてくる気がしている。今期はそもそも選ばれる数が減っているので……。

 

 

梗概選出がすべてか

煽っておいてなんだが、梗概選出がすべてというわけでもない。高レベルになってくると、最終的に争うのはやはり実作の完成度になるからだ。

だがこう考えてしまうと、梗概づくりをなまけてしまうような気がするので、やはり梗概は大事である。

 

個人的に、梗概選出は多少、運がからむと思っている。2つAで選ばれないときもあるし、1つAで選ばれるときもある。ただ、AやBなどの「評価自体」はあまり運が絡まないと思っている。まずはひとつBをもらう、というのも目標にしてもいい。(評価基準がさっぱりわからない、相性の悪い先生もよくいるが……)

 

また、上手い人の中には、梗概の評価をまったく気にしない人もいる。梗概が選出されなかろうが、評価が悪かろうが、ゴーイングマイウェイで実作を書く。(書くのが好きだからかもしれない)。この講座は、毎月勝ち負けが決まるので、1回の評価に一喜一憂するのも考えものである。たくさんの勝負に挑む人は、たくさん勝って、たくさん負けるので、長期的に見て目の前の結果に一喜一憂しないことがある。 (ただ、初心者の方は、講評からの反省やフィードバックくらいはした方が良いと思うが……)

 

しかし、評価を気にしながら書くと、まったくうまく書けない、という人もいる。 矛盾しているかもしれないが、書くことが好きな人は、評価など気にせず自分の好きなものを書くといいかもしれない。

 

  

21世紀SF1000 PART2 (ハヤカワ文庫JA)

21世紀SF1000 PART2 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者:望, 大森
  • 発売日: 2020/02/06
  • メディア: 新書
 

関係ないけど、主任講師のSFコラムを集めた文庫。目標?は、その年刊行されたSF作品すべてをレビューすること。各作品ごとに筆者のおすすめ度(★5つ)評価が書かれている。各作品のあらすじやおすすめポイントが書かれていて、結構勉強になった。

 

 

余談:梗概と実作、どちらをがんばるか

この講座は基本的に、とても忙しい。なので、あれもこれもとやっていると、どっちつかずな結果になりがちである。(強い人はだいたい書くのがとても早いけれど)

 

梗概には梗概を書く能力がいるし、実作には実作を書く能力が必要で、両者はわりと別物の感じがある。梗概ばかり書いていると、いざ選出されたときに実作が書きにくいだろう。書きたい人は実作をどんどん書くと良い。また、おろそかになりがちだが、小説のハウツー本やSF作品、過去の受講生の作品を読むことも、りっぱな勉強である。

 

受講生の作品を読むかどうか。梗概を全部読むかどうか問題だが、時間にもよるが、なるべく読んで、「この梗概がSF的に面白いので評価されそう」という予想をたて、講座の結果と比較してみると、SF的価値観が磨かれるかもしれない。なぜかというと、「この作品、すごく感動したし共感したしおもしろそうだけど、SFとして評価が高いかどうかはまた別問題」だからである。

 

また、実作は、選出された梗概の実作くらいは、講座テキストだと思って読もう。テキストを読まずに授業を受けるのは厳しい。自主提出実作は、気になっている作者だけでもいい。

 

 

自分だけの目標を持つ

話を元に戻して、梗概選出が難しいならどうすればいいの、という話だが、自分だけの目標を持つといいかもしれない。受講生を指導している身としては、全員に優勝してもらいたいが、それは難しい。40人受講生がいても、優勝できるのはひとりなので、それぞれの目標を持った方がよい。あんまり高い目標を掲げるときついので、小さなステップを刻んだほうがいいだろう。

 

目標を決める理由は、あまりにも高い目標を掲げてモチベが下がるのを防ぐためと、途中で自信をなくしたときに再目標をつくるため、やっぱりモチベの維持である

 

 

★よくメンタルトレーニングの本では、下記のように目標とスケジュールを決めろと言う。

 

① 自分が今期の講座1年間でどうなりたいか

② ↑ の理想の自分と、今現在の自分との、能力の差はどのくらいか。

③ ①を達成するために、後から検証可能な、具体的な数値目標。

④ ③を達成するために、年間でどのようなことをすればよいか。

(1か月ごとのスケジュール)

⑤ 自分のいまの能力と照らし合わせながら、①~④を更新する。

⑥ 講座序盤、中盤、終盤で、①の目標が達成できそうか、振り返る。難しそうなら再度、目標を設定しなおす。

 

 

何度も言うが、評価や目標を気にしだすとうまく書けない人もいる。

評価がなくてモチベーションが下がりそうなとき、目標を見失いそうになったときくらいに振り返る、くらいが良いかもしれない。


 ざっくりとした目安と例

目標とスケジュールを書いたら、誰かに添削してもらうのも良い。もちろん個人の実力や執筆ペースはばらばらなので、自分に合わせて書くと良い。


★ 初級者 
① なりたい自分:小説を書いてみたい。 応募、1次選考に通るくらいになりたい。
自分の得意ジャンルを決めたい。SFを知りたい。


② 今の実力:小説を書いたことはほぼないが、好きな読書ジャンルはある。


③ 具体的な数値目標
 ・梗概選出1回、もしくはB評価2個以上
 ・ 実作提出、7,000字1回、11,000字1回、20,000字1回 
 ・最終実作で40,000字提出する


④以下、具体的なスケジュール

 

★梗概審査ありの回

  


 9/24 初回講座
★① 10/22 1-3 のあいだにSF小説、小説ハウツー本を読む。

★2 11/26 梗概はできるだけ提出する。

★3 12/22 書きたいジャンルを定める

★4 1/28 1-3の間に実作(7,000字前後)を提出

★5 2/25 4-5の間に実作(11,000字前後を提出。この辺りまでに梗概の評価を上げたい

●6 3/25 5と7の間に20,000字くらい書いてみる

★7 4/22 

★8 5/27 最終実作(40,000字)を書きはじめる

●9 6/24 最終実作の梗概提出
●7月下 最終実作〆切
●8/20 最終講評会

 

 
★ 中級者


① なりたい自分:新人賞の最終選考くらいまでに残りたい

② 今の実力:公募経験あり。1、2次通過経験あり
SF小説の経験はあまりないが、書くほうで得意ジャンルはある。

 

③具体的な目標

・梗概選出1~2回、もしくはそれに準ずる評価
・実作提出3回以上(最終実作のぞく)
・実作の自主提出で点数を1度以上とる(梗概だけでなく、実作の実力を磨く)
・最終実作で最終候補入り

④以下、具体的なスケジュール

 

梗概の書き方_感想会でよく言うこと_参考にしたい選出梗概

 

・梗概メモ

 

 

なぜ梗概を書くのか

①「このストーリーで実作を書く予定なんですが、どうでしょうか」と人に見せる企画書のようなもの

② 当然、①の場合、たまにボツが生まれる。実作を書くまえに「おもしろくない」と判定されるとボツになる

③ 作者の頭のなかを整理するためのもの

④ 良い梗概とは、「実作を読んでみたい、書かせてみたい」と思わせるもの。その場合、梗概を読んで、少し「おもしろそう」とか「感動した」とか思わせないといけない。

 

参考になりそうな過去の選出梗概

先に参考になりそうな過去の選出梗概を挙げておく。とばしても良いが、最初に書いたのは、過去の作品から学んでほしいので。作風やジャンルを真似してほしいということではなく、梗概の書き方に注目してほしい。作風は自分で作ってもいいし、似たような人を参考にしてもいい。

リンク先のページでデフォルトで梗概は見えていないが、「梗概」の下の▽マークを押す

 

★『めたらやたらとユーレはあつい』 稲田一声

半日前に殺された巻上マリは、気がつくと自分が幽霊になっていた。同じ幽霊である『先生』が言うには、幽霊は人間に触れることで熱を奪うことができるという。マリは自分を殺したと思われる男に復讐しようとするが……。

5期聴講生の稲田先生による、第2回の梗概。ストーリー良し、キャラクター良し、SF設定ギミック良しの、スキのない梗概。

 

★『AI、無人島を脱出できず』進藤尚典

 天才プログラマーにつくられたAIのポゾ。ニューヨークへと旅立った製作者を追いかけるため、ポゾは無人島の研究所からの脱出を目指す。ポゾはお金を稼ぐためにバーチャルユーチューバー『ポゾ子』になり……。

 第3期大森望賞、『推しの三原則 』の進藤先生の第1回目の梗概。AIの話なのに設定がぶっとびすぎているギャグSF。少し改行が多い気がするが、ストーリーがどんどん思いもかけないところに展開し、評価された。「SF設定は科学的なリアリティが必要」、というのを崩してくれる梗概。

『ポゾは自分をメールに添付して送ろうとするが、容量が大きすぎて入らない』の衝撃。

 

★『踊るつまさきと虹の都市』 榛見あきる

近未来、外套に電子身体を投影できる世界。チベット高地の仏教学都で、バレエのレッスンを受ける隻腕の少年ペーマ。彼は自分の電子身体である羅刹女ラクシャシー)を取り戻すため、電子身体を利用したダンスオーディションに挑む。

 第4期の最優秀賞作品の梗概。(実作は47000字)。最終実作は梗概選出はないが、高評価だった印象。梗概がすこし実作の文に近すぎている気がするが、設定をたくさん考えている作品の代表ということで。最終実作なので、これをいきなり目指すのはまずいと思うが。

 

★『オール・ワールド・イズ・ア・ヒーロー』黒田渚

映像ストーリー自動作成エンジン「ミューズ」のもと、仮想世界上で演技行動をする役者AIたち。ヒーロー役のテピスは奮闘するが、彼らは視聴者からの人気度(フレーム)が下がると、自分たちが消えてしまうことを知っていて……。

自分の第4期、第3回の梗概。満票選出。ほぼ設定のアイデア勝ちのようなもので、ストーリーはあまり具体的に書かれていない。あと細かな設定がつめ切れていないので、ここから書くのに苦労した。審査員からは、「いろんな設定を詰め込むと、おもしろそうなストーリーができそう」とのこと。

 

 梗概を書くのにどのくらいの期間が必要か

イデアがすでにあれば1週間だったり、1から勉強するなら1か月かかっても難しいときもある。たとえばいまからチベット仏教の話について書こうとしたら、資料を集めたり勉強したりで結構な時間がかかるだろう。つまり得意なこと・詳しいことで勝負したほうが時間は稼げる。

自分は普通に3週間まるまるかかる。

 

梗概に書くべき要素

梗概は、「さっき見た映画のストーリーを、友達にオチまで説明する」ことと似ていると思う。そういうときは大体おもしろいシーンしか言わないし、どうでもいい繋ぎのシーンは省くだろう。(このストーリーの説明が、本当に苦手な人もいるが)。

 

① SF設定。SFは設定でおもしろさの3分の1が決まる(かもしれない)。あとはその設定をうまくストーリーに生かすことである。よくある、「こういうSF的な設定や特殊能力を考えたが、科学的な説明やしくみはあとで実作のときに考えます」というのはよろしくない。読んでいるひとが納得できないからだ。それはミステリで「奇抜な殺人事件は考えましたが、トリックは後で考えます」と似たようなものである。そのトリックが知りたいのだ。

どこまで論理的に説明するかは、その物語のリアリティにもよるが、「読んだ人が納得できたらOK」かと思っている。どの程度説明するかは、似たような商業作品を参考にしたりする。

② ストーリー。物語がないとやはり厳しい。とくに「設定だけでストーリーがない」というのはよくある落とし穴である。がんばって考えたSF設定を生かすような物語にしよう。

③ キャラクター。あまり重要視された記憶はないが、SF設定と絡めるなら重要。

④ オチ。絶対に書こう。


 

梗概はどこまでストーリーを考えればよいのか

小説を作る工程として、

① 梗概(400ー1200字) → ② プロット、③キャラクター履歴書、④設定表、年表 → ⑤ 実作

 

と進むと思う。プロットとは、ここでは1シーン(場面)ごとの5W1Hを書いて、そのシーンでどんなことが起きるかを書いたもの、ということにする。映画だったら「はこ書き」などと言ったりするのだろうか。(このあたりはよくわかってない)。A7サイズの用紙に書いたり(カードプロット)、大きな付箋に書いたりする人もいる。ここでシーンを前後に入れ替えたり、いらないシーンを削ったりする。

 

つまり梗概を書くときは、各場面の細かい5W1Hまではいらないが、おおまかな話の流れは考えておく必要がある。先述した「映画のおもしろいところを説明する」では、どうでもいいシーンは説明しないし、面白い設定やシーンは細かく話すだろう。つまり重要なSF設定や、盛り上がるシーン、キャラクターなどは、細かく決めておく必要がある。(上述の選出梗概を見てほしい)

最初は①梗概を書くために、②や③を考えて行ったり戻ったりするだろう。やってはいけないのは、⑤実作を書いてから梗概を書く、のはやってはいけない。

 

じゃあ具体的にどうやって話を考えればいいの? というのは、人それぞれでよくわからない。よくシナリオの本に「この項目を埋めていけば自動的にストーリーができる」というのがあるが、使ったことがないので紹介できない。

 自分はまず出されたテーマをじっくり見つめ、自分の書きたいアイデアと共通点はないか、じっくりじっくり考えてストーリーを作る。正直、時間がかかってしょうがない。


 

短編50枚におさまるストーリー

次のステップとして、実作(50枚、約18000字)を見すえた梗概を書くというのがある。50枚と言ったら、ドラマやアニメで言ったらだいたい30分くらい。(最近こういう30分ぽっきりのドラマやアニメがあるのかはわからないが、かなり難しいサイズだ)。シリーズものの30分ではなく、事前情報はいっさいなし、続編もなし、映像がスタートしてキャラ説明して舞台説明して、ドラマがあってオチがあって満足のいく30分アニメは、結構大変である。

 

いま、受講生の中には、アイデアがあふれるほどある人や、ネタがさっぱり出てこない人がいると思う。アイデアをたくさん詰め込んでも、50枚には入りきらないことが多い。詰め込んだ梗概は、とっちらかってしまって面白くないことがよくある。上述の梗概は、「つまさき」以外は大体50枚に収まりそうな話である。

 

初心者の方は、自分が作った梗概が、50枚に収まるかどうか見積もるのが難しいと思う。自分は作品の長さを、「キャラクターの数」、「作中の時間の長さ」、「場所の数」、「設定の数」で見積もる。50枚なら、主要キャラクター(成長したり見せ場があったりするキャラ)は多くて3人、作中の時間は3日~長くて1カ月、出てくる場所は3、4つくらいかと思う。過去話や幼少期の話を書き始めると、どんどん枚数が足らなくなる。また設定は、現代の学校なら説明は1行ですむが、未来の異星の話なら説明がたくさん必要だろう。

逆に言うと、「長すぎるな」と思ったら、キャラクターを減らすか、作中時間を減らすか、場所を減らすか、設定を減らす。ジャンプ漫画も、新キャラが増えたりキャラの「過去編」をしたり新しい島に向かったら、話が延びるだろう。

 

書くべきこと、書かないこと

 梗概には字数制限があるので、どうしても「書くべきこと」「書かないこと」と取捨選択が必要になる。読む相手の主任講師のことを考えたらどうだろう。主任講師はSF、書評家のプロである。そんなプロに、すでに知っていそうな既存のSF設定の説明をしても、おもしろくないしあまり効果的ではない。逆に、主任講師の知らなさそうなこと、専門外かもしれないことは、後述の自己アピなどに出典や元ネタなどを書いた方がよい。

もちろん作者が考えたストーリーや設定は、作者しか知らないので、しっかりと書く必要がある。

 

現実にはかなり荒唐無稽な事件があるし、それをもとにして物語を書いても、「そんなの現実的じゃないよ」と思われることがある。よって、「これにはちゃんと根拠があるんです」「自分が好き勝手に考えたことじゃないんです」と説明することは大事だし、どこからが作者オリジナルでどこまでが事実に基づいているのか、分けることは大事である。


 

自己アピールの書き方

基本的に、梗概で書けないこと、製作の裏話や作者の意図、出典や参考文献、設定の元ネタなどを書く。また書くきっかけとなった、似ているプロの商業作品を書いても良い。梗概に書けそうな追加の梗概を自己アピに書くのは、あまり効果的ではない。(上述の選出梗概を参考に)。

 

自分はよく、「これを書こうと思ったきっかけ」「このアイデアのここがおもしろと思った」「これが書きたいと思った」的なことを書く。正直、審査には影響はないかもしれないが、「もともと何が面白いと思って書き始めたのか」と、自分の頭の整理になる。
またこれは感想会からの立場だが、「このアイデアを書きたいと思った」と書いてくれていたら、こちらは「それならこうしたほうがいい」とアドバイスがしやすい。審査員も、梗概から意図をくみ取れなかった場合、「そういうつもりなのね」と納得するだろう。

よくない自己アピ

たまにある「実作では悲劇的に書こうと思います」というのは、あまりよくない。悲劇のストーリーの梗概なら、一読した人がちょっとウルっとするくらいでないといけない。『ロミオとジュリエット』の梗概を書いて、自己アピに「悲劇的に書こうと思います」とあっても、「見ればわかるよ」となるし、ロミジュリの梗概を読んで悲劇だと思われなかったら、それは梗概がかなりまずい、ということになる。

「ギャグで書こうと思います」というような梗概なら、梗概の時点で3、4回笑わせないといけないだろう。 

 

また「ロボットの心とはなにか、を書こうと思います」等も、自分はあまり良いとは思えない。おもしろいと思えないからである。それなら、「ロボットの心とはコロッケのようだと思います。なぜなら〇〇だから」くらい、言い切ったほうがおもしろいし、それを梗概につっこんでおいたほうが、面白いからである。つまり「〇〇とはなんなのか?命とは?」ではなく、「命とは〇〇である」と、結論まで考えたほうが良いと思う。

 

 

本読み

ジュニアミステリ祭り。

 

 

 

・ある島に集められた10人の男女。ひとりずつ殺されていく

 

  

 

 

 

 

 

美人で料理ができて車も運転できる、凄腕のスーパー使用人ことルーシー・アイルズバロウさんが出てくる回。ある日パディントン発の列車の中で殺人事件が起き、その死体はクラッケンソープの邸宅にあるとふみ、ルーシーが潜入捜査。

 

『わたしがあちこち、そこらじゅうに出向いて、人に尋ねまわったり、調べたりできるわけじゃないもの』

『ルーシーは32歳、オックスフォード大学の数学科を首席でパスしている。

学問的な優秀さに加えて、健全な良識という芯がそなわっていた。学問で名をはせる人生では報われることは少ないと、ちゃんと心得ていた。自分よりは知力の劣る人々と接するのが楽しいのだった。つまり、人間と言うものが、さまざまな種類の人間が好きだった。ただし、ずっとおなじ人たちと接するのは望まなかった。それにまた率直に言えば、お金も好きだった。

 ルーシーがいったんその家庭に入ると、すべての悩みや心配事や重労働が、いっさい消えてしまうのだ。

 台床のゆかをごしごしこすり、庭に穴を掘り、犬の糞もきれいに始末し、石炭まで運んだ。』

ルーシーと子供たちのやり取りでなごむ。というか子どもたちも頭がいい。ルーシーは作中で3人ぐらいから言い寄られる、すごいおじさんにまで惚れられる、おじさんキラー……。

  

・ABCの時刻表をもとに、ABCの頭文字がつく地名と、頭文字がつく人間がつぎつぎと殺されていく。Aはタバコ屋の奥さん、Bはカフェのウエイトレス、Cは有名なコレクター。しかも犯人は、犯行の前にかならずポアロに挑戦状を送り付ける。犯人の真相は?

 

・今回の美人大賞。ソーラ・グレイ。秘書さん。

・途中から被害者遺族で犯人捜しの『特別部隊』が結成される。挿絵で見るとなんか笑ってしまうが……。

 ・「あなたはイギリス人のくせして、あからさまな質問をぶつけられた時のイギリス人の反応が何もわかっていない。

 しかし、それを普通の会話にして、話の流れにさからうようなことを言えば、みんなすぐにべらべらしゃべりだすものです」

・ポワロさん、新聞記者になりすます。

・この時代に、プロファイリングのような技術、犯罪心理学の技術があったことに少し驚いた。

・「じゃあ、まだわかっていないんだね、だれが、だれがベティを――」

感受性が強く、用心深い人に良くあることだ。暴力的なことをことばにしたくないのだろう。

 

 ・新聞広告に掲載された『殺人』の予告。パーティのお誘いだと思った10数人の村の住人たちが、ひとつの家に集まる。とつぜん停電した部屋。3発の銃声。犯人は自殺したと思われたが、犯人の本当の目的は何だったのか。

 つぎつぎと明かされていく村の人々の事情……。

 ・初めて読むマープル。おばちゃんパワー。

・メイドのミッチちゃん最強説。すぐかんしゃく起こすし暴れまわるけど、料理の腕は抜群?という子。お客さんが来ても対応しない、すぐ暇をもらおうとする、「あの人はナチスなのよ、あの金髪とブルーの瞳を見てください。だから、あたしをばかにして――」 

・「フォール・ガイ(身代わり)」

・だめだめだと思った男と、美人の女性の急な裏庭のロマンス。「これがぼくのアリバイだ。ルーカス夫人が園芸用品小屋の入り口でいらいらして待っていても、ぼくはここにカボチャのためにやってきたんだ。いちゃついてるなんて言わせない」。文学青年は口説き文句がおそろしい。日本が舞台では書けないシーンだ……。

ブラックロック夫人の挿絵はよかった。

 

・ヒンチクリフとマーガトロイドのカップルは幸せになるべき、というか、彼女らふたりが事件の再現をする、というシーンはうまいなと思った。ただ、完全に三人称の小説じゃないと書けないけれど。

・登場人物多くて美人祭り。。

 

 

 

・表紙の看護師レザラン女史が、とある遺跡の発掘チームに派遣される。そこではチームリーダーの奥さんミス・レイドナーが、毎日なにかに怯え、チームの雰囲気も壊しているということだった。 レイドナーは前夫から脅迫状が届いているという。そんななかで案の定、殺人事件が発生。わきあいあいとした10人の男女発掘チームのなかに、不穏な空気が漂い始める。

 

 トリックはわからないが、複数の男女模様を書くのがうまいなあと毎度思う。とくに今回の中心人物、ミス・レイドナー、ライバルのマリー・マーカド、アン・ジョンソン、ハチャメチャなシーラ・ライリー。レイドナーは一見美人で天真爛漫だが、気分屋だったり、誰かをもてあそんだりする悪女なのか、どうなのか。シーラはちょっと若くておばかだけど、味がある。性格が一層ではなく、何層もある。とくに「この人が犯人なのか」が多いので、裏の性格を書くのが大変そう。

 その点、語り手のレザランが良い子すぎる感じがしないでもないが、語り手なので仕方がない。相棒が女性ということからか、挿絵のポアロが3倍増しでかっこよく書かれている気がする。(ただ本文中はそうでもない描写なので、よけいに美化がすごい)。

  

『「このごろよく眠れないらしいとか、目の下にくまができているとか言われているとしたら、それは青鉛筆のせいよ。」
 可能性はある。パーティー会場で、全部の男性からダンスを申し込まれないと気がすまないような人を、わたしは何人も見てきた。』

『でも、やはりなにもわかっていないのではないか。それくらい天真らんまんに見える。』

 

『このへんてこりんな小男が鋭い目の持ち主であるのは間違いない。』

 

 

 

 

 

 

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SFファン交流

 キャンディボックス 時間旅行者

プリースト 横浜小説

モンティパイソン 殺人ジョーク

クリストファープリースト 隣接界

第五の季節 - N・K・ジェミシン/小野田和子 訳|東京創元社

 

 

・ドリフトグラス、サミュエル

・内部構造

・時間リング構造。

 夏への扉、商人と錬金術師の門、サマータイムマシンブルース

上田誠とジン

 

・情報の差を使った謎解き、コメディ

決定論と自由意志、閉塞感の演出

・『マイナス・ゼロ」「エンパイア・スター」「墓標天球」

 梶尾真治「時尼に関する覚え書き

 

★空間リング構造

 際限ない広がりの表現、閉塞感の演出、ドラクエのマップ

・「遠近法」「バビロンの塔」「集中都市」「堕天の塔」 集会境界条件

(時間。空間複合トーラス)「クロックワーク・ロケット」

梶尾さんは時間SF(クロノスジョウンター)

・「タンパク質みたいに」

 

フラクタル構造

 無限に連なるレイヤー構造、レイヤーの透過性、横断するものの特別性

・構造素子、Fisherman's Tale

プラネタリウムの外側、息吹

・「蒼穹のファフナー」はループも

易者の予言「○○はいついつに死ぬ」に乗っかって○○を殺す、と云うようなミステリがあります(予言と殺人で因果関係がループしてる)

 

★合わせ鏡

 「無限に連なる同じ世界」「呪術的」「多様性」

 月の合わせ鏡、「ドロステのはてで僕ら」映画

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SF講座の第4期生は強かったのか? ~梗概数、実作数、ポイント計測~

気になったので、梗概数と実作数、およびポイント総数を3期とともに計測した。(一部に1期と2期)。

 

 

 

第4期感想会の、1年間のまとめはこちら。

chrestomanci.hateblo.jp

 

 

 

 

各期の基本データ

表1 各期の基本データ(35位まで)

  点平均 点分散 標準偏差 変動係数 受講生数 総得点
第1期 11.66 164.11 12.63 1.08 40 409
第2期 13.43 159.78 12.46 0.93 44 478
第3期 13.77 143.42 11.80 0.86 48(46?) 497
第4期 20.00 222.71 14.71 0.74 48 733


講義でのポイント割り振り方法
 

 

① 1回の講義につき、選出作3作には「10点(第4期からは20点)+(受講生総数-その課題で梗概を提出した人数)」が総得点になるように割り振る。

② 他の受講生には、梗概を提出した時点で+1点

③ 優秀な選出外の実作(自主提出作)に点が入ることもある

 

表1に、各期の基本データ(平均、得点の分散、標準偏差、変動係数)を示す。データは各期の得点35位までのデータを用いた。ポイント割り振り方法は各期同じなので、平均点を比べてもあまり変わらない。

 平均は、本来なら全期ほぼ同じ値になるはずだが、下に行くにつれ平均点が少しずつ上がっている。おそらくこれは受講人数が多くなると、そもそも総得点が増えるからと思われる*1。各期、受講人数が少しずつ違う上に、期の途中から聴講生→正規受講生になったりするので、微妙に平均点が異なる。(第3期は途中から参入で合計48名)

第4期の平均と分散が大きく上がっているのは、これはこの期から得点方法が変わり、講師が作品に割り振る得点が10点→20点になったためである。

 

梗概提出数の計測

図1 梗概提出数

 

図1に梗概提出数(3期と4期)を示す。横軸は第〇回。梗概の選出、選出外は考慮していない。受講生数の差の補正のために、第5回までの第4期の提出数を-3、それ以外の回は-1の補正をかけた。補正込みでも、全体的に第4期の提出数は微増となっている。(特に後半)

 

実作提出数の計測

 

図2 提出実作数

 

図2に提出実作数(第3期、第4期)を示す。横軸は第〇回。こちらも第4期のすべての回を-1としたが、全体的に第4期が増となっている。(実作の内容は考慮していない)。

第4期の第8回の異常な伸びの理由は不明だが、強いて言うなら、第8回の講座日から〆切日までの日数は28日で、直前の第7回はわずか14日だったくらいだろうか.後半になって最終実作に向け、はじめて実作を書いたという受講生も多いだろう。

 第4期の第9回、第10回(最終実作)は、新型コロナの影響で講座が延び、〆切も延びたので、その点は有利である。ただコロナの影響で仕事や執筆場所がなくなり、創作どころではない受講生もいたので、その点は微妙である。

第4期で自主提出が増えたのは、単に受講生のやる気が増えたというのもあるが、後述の、加点得点が倍になり、自主提出にポイントが振り分けやすくなったというのもあるだろう。( 第3期は、自主提出実作に感想を送る『ゴッド・ガン・レディオ』というwebラジオがあったが、第4期で実施していたら大変だったと思う。)

 

受講生の年間ポイントばらつき

他は、平均点を見ても仕方がないので、あとはポイントのばらつき具合(分散)くらいである。分散が小さいほど、ポイントのばらつきが小さくなり、接戦ということになる。

こちらの結果は、第1期~第4期まで計測し、1~35位、1~20位、1~10位までの分散のグラフまで作っていたのだが、諸事情により公開はやめておく。

結果から言うと、予想通り、第4期の分散がいずれも小さかった。(正確には、分散ではなく変動係数を用いた。これにより得点方法が倍になっても、受講生数が変わってもばらつき具合が比較できる)*2

 

特に1~15位、1~10位までの分散が小さく、だいぶ差が縮んでいる様子だった。
分散が小さくなった理由は、

① 受講生がよく梗概を提出することにより、提出点が増えてより分散が小さくなった。

② 加点ポイントが増えたことにより、講師がいろいろな作品にポイントを振り分けやすくなった。 

③ 単純に色々な人が梗概選出されるようになった。 などが考えられる。

 加点方法を変えたそもそもの理由は、梗概提出数が多くて選出実作への加点ポイントが減り(割り振り方法①による)、差をつけにくくなったため、だったと思う。しかし、②の結果、より多くの作品にポイントが振られるようになり、結果的に良かったのではないかと思う。③は確か、以前に計測したところによると、年間で1度でも梗概選出された人の数は、第3期より第4期の方が増えているはずである。(同じ受講生が選出される数が減った)。

 

 

下記に、それぞれのトップ10の得点を表示する。実データを見ると、得点方法(総得点)が変わっているのでわかりづらいが、確かに第4期の方が、全体的にバーが右に偏っているように見える(ばらつきが小さい)。

f:id:dianachrestomanci:20200803181317p:plain

第4期のTOP10得点

f:id:dianachrestomanci:20200803181206p:plain

第3期のTOP10得点

 

最終候補者の順位

 表2 最終候補者の得点順位(赤色が最終候補者  濃い赤は継続受講生+最終候補 緑は継続受講生

第1期 第2期 第3期 第4期
1 1 1 1
2 2 2 2
3 3 3 3
4 4 4 4
5 5 5 5
6 6 6 6
7 7 7 7
8 8 8 8
9 9 9 9
10 10 10 10
11 11 11 11
12 12 12 12
13 13 13 13
14 14 14 14
15 15 15 15
16 16 16 16
17 17 17 17
18 18 18 18
    (23)  

  
 表2に、最終候補者の年間順位を示す。色を付けた順位が最終候補者の順位で、濃い色は継続受講生(元第〇期生)である。
 表を見ると、第1期はだいぶバラけているものの、第2期は上位 1位~6位、8位がそのまま最終候補者となっている。しかし第3期から徐々にばらけ始め、第4期は14位、17位、18位の受講生が最終候補者となっている、17~18位の順位ラインとなると、年間で梗概選出を1度も経験していないラインになる。最終実作は1位から18位まで、かなり評価が拮抗していたのではないだろうか。

 

(本当は、第3期の最終候補者に 23位の方がいるのだが、この方は聴講生からの途中参加で元 2期生だったこともあり、特殊な例として割愛させて頂いた。すみません)

 

史上初? 最終候補者が全員新入生

また表2を見ると、第2期と第3期の最終候補者には先期からの継続受講生がいるが、第4期にはおらず、全員が新人生だったことも特徴的である。SF講座が期を重ねるごとに、継続受講生は増えているにもかかわらず(緑色)、最終候補が新人のみとはわりと異例のことである。継続受講生も得点上位には入っているので、両者の実力の差が縮まってきている……と言えるかもしれない。

 

まとめ

だいぶ受講生の提出数が増えてきているが、講座のシステム自体(と講師の数)はあまり変わっていない。主任講師ががんばってすべての作品を見ているが、評価からこぼれ落ちている作品も増えているかもしれない。より多くの受講生を評価するには、受講生同士で講評するか、特別賞を増やしたりする等、なんらかの対策が必要かもしれない。(来期は受講生数そのものが減るかもしれないが)。

 

 

★元データ(得点)

https://school.genron.co.jp/works/sf/2016/scores/
https://school.genron.co.jp/works/sf/2017/scores/
https://school.genron.co.jp/works/sf/2018/scores/
https://school.genron.co.jp/works/sf/2019/scores/

★ 最終候補者

https://school.genron.co.jp/works/sf/2016/subjects/11/
https://school.genron.co.jp/works/sf/2017/subjects/11/
https://school.genron.co.jp/works/sf/2018/subjects/11/
https://school.genron.co.jp/works/sf/2019/subjects/11/

 

 サムネ用

f:id:dianachrestomanci:20200826205739p:plain

*1:たとえば受講生が30人でそのうち25人が梗概提出した場合、25人の総得点は10点+(30人-25人) + 22点 =37点で、受講生が40人でそのうち25人が梗概提出した場合、25人の総得点は10点+(40人-25人) + 22点=47点になる

*2:変動係数(標準偏差/平均)とは、スケールや単位が違う2つのデータの分散を比較するためのものであり、ほぼ分散と考えていい。この値なら受講人数の差も吸収できる。

第4期 感想会をやったら全員強くなった。~最終結果とアンケート分析~

 

今期の感想会は計12回行った。

当初は講座を継続的に受講するために開催していたが、結果的に最終候補者が続出して、うれしいやら驚くやら。

今回はアンケート結果をまとめた。

 

最終作品と受講生一覧

school.genron.co.jp

最終選考の発表前、梗概選出数の分析はこちら


 

 

 

どんなことやってるの

 だいたい月に一度、〆切(木曜日)の週末の土日祝いずれかで、有志で行っている感想会。会議室で、1作品30分の講評。はじめに作者から要望などをコメントして、あとは講評を言い合う。以前はフリートークをしていたが、いまはzoom形式で参加者がひとりずつ講評している。だいたい7時間くらいかかっている。今期は全12回。

 

 出席回数のまとめ

 

表1 出席回数 (最終候補者あと一歩の方

10~12 回 稲田、渡邉 、中野、黒田
7~8回 夢想、藤田
4~6回 藍銅、遠野、揚羽、安斉、よよ、高田
2~3回 榛見、宇部、今野武見、甘木、松山、藤琉、能仲

 

表1に参加者と参加回数を示す。(どなたが実際に参加したかは、きちんと記録をとっていなかったので、1,2回の誤差はあるかもしれない)。結果的に多くの方が最終候補に入り、主任講師からの「最終候補まであと一歩」にも選出されたので、結果はかなり良い。もちろん、もともと実力が高い人、やる気がある人もおり、すべて感想会のおかげというつもりはない。

また最終候補以外の方も、講座初期に比べて格段にうまくなった方が多数いる。来期も受講を続ける方もおり、今後の糧にしてもらいたい。

 

 では実際に、感想会のなにが効果的だったのか、ということで、アンケートを取った。

 

感想会で良かったこと~アンケート結果①~

 

 下記にアンケート項目を記載する。募集期間は 8/7~8/14。回答数は12。実施はgoogleフォームの匿名アンケートで行った。

 

質問項目

① 講座の受講を続ける意欲が増えた
② 実作を書く意欲が増えた
③ 梗概の書き方について、他の受講生からもらう講評が参考になった
④ 実作の書き方について、他の受講生からもらう講評が参考になった
⑤ 他の受講生を作品を読むことで、勉強になった
⑥ 他の受講生の作品を講評することで、勉強になった

⑦ 講座の梗概選出の役に立った
⑧ 講座の実作評価向上の役に立った
⑨ SFがどういうものか、勉強になった
⑩ 執筆の仕方、執筆環境について、勉強になった
⑪ SFの商業作品(小説、映画など)について、勉強になった
⑫ 他の受講生との交流が増えた

 

図1 アンケート結果①

 

 そう思う5点~そう思わない1点で回答。有効回答数8の平均をとった。(聴講生の回答は保留とした)。縦軸は3点~5点としている。

 特に得点が高いのは ⑫ 「受講生との交流が増えた」。講座のときは意外と交流する時間がなく、飲み会でも腹を割って話すことはあまりない。お互いの作品を読んで議論すれば、交流もしやすいのだと思われる。(飲み会で講評はやらないほうが良いと思うが)

他に、⑤「他の受講生の作品を読むことで勉強になった」⑥「作品を講評することで勉強になった」という意見も多い。感想会のメリットのひとつに、強制的に他作品を読むことがある。幅広いジャンルの作品が「SF」として受け入れられているので、参考になることも多い。
 また、同じ受講生の作品を継続的に見ていると、「この人はとても上手くなったな」とか、「この人は得意なジャンルを見つけたな」などがわかり、刺激にもなる。

 

ほかは①「 講座の受講を続ける意欲が増えた」② 「実作を書く意欲が増えた」が高い。作品についていろいろ言われると、書く意欲がなくなる受講生もいるが、うまくモチベーションに変換しているようである。

 

意外だったのは、④「実作の書き方について、他の受講生からもらう講評が参考になった」の点数が高く、③「梗概の書き方について参考になった」の点数が比較的低いことである。感想会の参加者はわりと梗概選出もされているので、梗概の書き方もかなりレベルアップしているはずである。(前回の記事では、梗概の書き方には効果あり、実作の書き方には効果不明、という結論だった)。

 これはアンケート回答の時期が最終候補発表の直後(8月)で、最後の梗概選出は2月で終わってしまっており、印象が薄れているのかもしれない。また終盤のみ参加された方は、梗概選出の時期が終わってしまっており、最終実作のブラッシュアップに役に立ったと感じている人が多いこともある。(また今期は、梗概選出されずに最終候補になった方もいる)。

 正確には検定をしないといけないが、サンプル数も少ないので省略する。

 

感想会で大変なこと~アンケート結果②~

 

質問項目

① 他の受講生の作品を読むのが大変だった
② 他の受講生の作品を講評するのが大変だった
③ 感想会の時間が長くて大変だった
④ 他の受講生からの講評で、つらいと思ったことがある
⑤ 梗概や実作を書こうとしたとき、感想会の講評を思い出して妨げになったことがある

 そう思う5点~そう思わない1点で回答、4,5点を「そう思う」、3点を「どちらとも」、1,2点を「そう思わない」でカウントし、集計した。回答数は 9件。

①「他の受講生の作品を読むのが大変だった」に多くの「そう思う」が回答されている。後半は実作が4作5作も提出されていたので、そのためと思われる。

③「感想会の時間が長くて大変だった」。開催するごとに8時間以上かかっているので、今後は再考の余地がある。作品講評は、なるべく多くの受講生に感想をもらったほうが、多様な感想(自分はこれが好きとか自分はよくわからなかったとか)につながると思っているので、いまは全員で行っている。が、講座終盤は参加者も講評に慣れてくるので、2グループくらいに分けるほうが現実的かもしれない。これにより①も解決すると思うが、当日に欠席が増えると人数が足らなくなる……。

 

意外にも、④「他の受講生からの講評で、つらいと思ったことがある 」がほとんどないことは驚いた。作品への指摘もかなり多かったと思うが、そのあとのフォロー(?)が良かったのかどうか、正直よくわからない。

 

 

アンケート自由回答

設問 「感想会でもらった印象的な講評、実際に実践したアドバイスなどがあれば、お書きください」の自由回答を示す。

 

「印象的な講評」自由回答

 

◆地の文に比べてセリフ部分が軽いというアドバイスを貰ったので、不要なセリフを減らすようにした。

◆最終実作のプロットに変更あり。

◆参考文献の教示(受講中は文献を開拓できないので、これは本当にありがたかった)

◆参考図書を教えていただけるのがとてもよかったです。

◆最終実作については、構成の見直し(採用するエピソードやその順序)、セリフなど参考になりました

 

 幹事がアドバイスしたものもあり、意外だったので少しビビっている。

最終実作直前の感想会(6月)は、コロナで講座が延期になり、空白期間が生まれたときに、思いつきで実施した。正直、いつもはゲンロンが実施している原稿回収や〆切決めまで行わないといけなかったので大変だったが、好評だったようである。ズルいと言われるとそれまでだが、直前に原稿をいじるのも善し悪しなので、諸刃の剣ではある。

 

来期の開催

 ほかにも、幹事の割り振り、来期は開催すべきかどうか、開催の時期など、色々な意見をいただいた。来期はとりあえず初回に開いておいて、後は5期生に運営をまかせるようにしたい。

 

 

サムネ用

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第4期感想交換会 第10回

 

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※画像はイメージ

 

 

日時:6/14(日)13:00 - 21:20 、〆切 6/9 (火)

場所: リモート開催

参加者:12名、(予定13名 聴講生2名 録音2名)

対象作品:梗概 3、実作9

 

・講座がのびのびになっているので、追加の開催。

・開催の連絡が5/12、開催日と原稿の提出〆切を決めたのは5月21日だが、このときはまだ講座の最終日程が公開されていなかった。結局、講座が 6/18 となったので、ちょうどよいところに〆切を決めたことになる。いい感じの日に決めたのに、誰も褒めてくれない。

・今回は開催だけでなく、〆切決定と原稿回収まで行った。さすがに厳しくなってきた。原稿にはフォーマットを作っておきたかったのだが、さっぱり余裕がなかった。

・提出物は、最終実作の修正梗概、途中までの実作など。実作が途中までとなると、やや指摘や文句が多くなりがちになる気がする。これから面白くなるのにな、というのがあまり通用しない。 

 途中の〆切を設けることに、メリットとデメリットがあると思うが、できればメリットに転がるようにしてもらいたい。ほかの生徒の作品を読んで原稿が間に合わなかった、というのはつらいので、共倒れにならないようにしたい。

 

 

 少し前から、感想会はあと2、3回だから幹事がんばるか~と思っていたのだが、最後のほうになって初めてのzoom開催、コロナの延長でまさかの追加開催、もう一回遊べるドン、は予想していなかった。早めに分担すれば良かったと思う。

 今回は原稿の調子も悪く、事務作業が山のように増えたので、かなりアレだった。後から振り返って「まあよし」としたい。