まほうのことば

小説の新人賞などに応募しています。本の話や創作の反省。黒田なぎさ

SF講座の第4期生は強かったのか? ~梗概数、実作数、ポイント計測~

気になったので、梗概数と実作数、およびポイント総数を3期とともに計測した。(一部に1期と2期)。

 

 

 

第4期感想会の、1年間のまとめはこちら。

chrestomanci.hateblo.jp

 

 

 

 

各期の基本データ

表1 各期の基本データ(35位まで)

  点平均 点分散 標準偏差 変動係数 受講生数 総得点
第1期 11.66 164.11 12.63 1.08 40 409
第2期 13.43 159.78 12.46 0.93 44 478
第3期 13.77 143.42 11.80 0.86 48(46?) 497
第4期 20.00 222.71 14.71 0.74 48 733


講義でのポイント割り振り方法
 

 

① 1回の講義につき、選出作3作には「10点(第4期からは20点)+(受講生総数-その課題で梗概を提出した人数)」が総得点になるように割り振る。

② 他の受講生には、梗概を提出した時点で+1点

③ 優秀な選出外の実作(自主提出作)に点が入ることもある

 

表1に、各期の基本データ(平均、得点の分散、標準偏差、変動係数)を示す。データは各期の得点35位までのデータを用いた。ポイント割り振り方法は各期同じなので、平均点を比べてもあまり変わらない。

 平均は、本来なら全期ほぼ同じ値になるはずだが、下に行くにつれ平均点が少しずつ上がっている。おそらくこれは受講人数が多くなると、そもそも総得点が増えるからと思われる*1。各期、受講人数が少しずつ違う上に、期の途中から聴講生→正規受講生になったりするので、微妙に平均点が異なる。(第3期は途中から参入で合計48名)

第4期の平均と分散が大きく上がっているのは、これはこの期から得点方法が変わり、講師が作品に割り振る得点が10点→20点になったためである。

 

梗概提出数の計測

図1 梗概提出数

 

図1に梗概提出数(3期と4期)を示す。横軸は第〇回。梗概の選出、選出外は考慮していない。受講生数の差の補正のために、第5回までの第4期の提出数を-3、それ以外の回は-1の補正をかけた。補正込みでも、全体的に第4期の提出数は微増となっている。(特に後半)

 

実作提出数の計測

 

図2 提出実作数

 

図2に提出実作数(第3期、第4期)を示す。横軸は第〇回。こちらも第4期のすべての回を-1としたが、全体的に第4期が増となっている。(実作の内容は考慮していない)。

第4期の第8回の異常な伸びの理由は不明だが、強いて言うなら、第8回の講座日から〆切日までの日数は28日で、直前の第7回はわずか14日だったくらいだろうか.後半になって最終実作に向け、はじめて実作を書いたという受講生も多いだろう。

 第4期の第9回、第10回(最終実作)は、新型コロナの影響で講座が延び、〆切も延びたので、その点は有利である。ただコロナの影響で仕事や執筆場所がなくなり、創作どころではない受講生もいたので、その点は微妙である。

第4期で自主提出が増えたのは、単に受講生のやる気が増えたというのもあるが、後述の、加点得点が倍になり、自主提出にポイントが振り分けやすくなったというのもあるだろう。( 第3期は、自主提出実作に感想を送る『ゴッド・ガン・レディオ』というwebラジオがあったが、第4期で実施していたら大変だったと思う。)

 

受講生の年間ポイントばらつき

他は、平均点を見ても仕方がないので、あとはポイントのばらつき具合(分散)くらいである。分散が小さいほど、ポイントのばらつきが小さくなり、接戦ということになる。

こちらの結果は、第1期~第4期まで計測し、1~35位、1~20位、1~10位までの分散のグラフまで作っていたのだが、諸事情により公開はやめておく。

結果から言うと、予想通り、第4期の分散がいずれも小さかった。(正確には、分散ではなく変動係数を用いた。これにより得点方法が倍になっても、受講生数が変わってもばらつき具合が比較できる)*2

 

特に1~15位、1~10位までの分散が小さく、だいぶ差が縮んでいる様子だった。
分散が小さくなった理由は、

① 受講生がよく梗概を提出することにより、提出点が増えてより分散が小さくなった。

② 加点ポイントが増えたことにより、講師がいろいろな作品にポイントを振り分けやすくなった。 

③ 単純に色々な人が梗概選出されるようになった。 などが考えられる。

 加点方法を変えたそもそもの理由は、梗概提出数が多くて選出実作への加点ポイントが減り(割り振り方法①による)、差をつけにくくなったため、だったと思う。しかし、②の結果、より多くの作品にポイントが振られるようになり、結果的に良かったのではないかと思う。③は確か、以前に計測したところによると、年間で1度でも梗概選出された人の数は、第3期より第4期の方が増えているはずである。(同じ受講生が選出される数が減った)。

 

 

下記に、それぞれのトップ10の得点を表示する。実データを見ると、得点方法(総得点)が変わっているのでわかりづらいが、確かに第4期の方が、全体的にバーが右に偏っているように見える(ばらつきが小さい)。

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第4期のTOP10得点

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第3期のTOP10得点

 

最終候補者の順位

 表2 最終候補者の得点順位(赤色が最終候補者  濃い赤は継続受講生+最終候補 緑は継続受講生

第1期 第2期 第3期 第4期
1 1 1 1
2 2 2 2
3 3 3 3
4 4 4 4
5 5 5 5
6 6 6 6
7 7 7 7
8 8 8 8
9 9 9 9
10 10 10 10
11 11 11 11
12 12 12 12
13 13 13 13
14 14 14 14
15 15 15 15
16 16 16 16
17 17 17 17
18 18 18 18
    (23)  

  
 表2に、最終候補者の年間順位を示す。色を付けた順位が最終候補者の順位で、濃い色は継続受講生(元第〇期生)である。
 表を見ると、第1期はだいぶバラけているものの、第2期は上位 1位~6位、8位がそのまま最終候補者となっている。しかし第3期から徐々にばらけ始め、第4期は14位、17位、18位の受講生が最終候補者となっている、17~18位の順位ラインとなると、年間で梗概選出を1度も経験していないラインになる。最終実作は1位から18位まで、かなり評価が拮抗していたのではないだろうか。

 

(本当は、第3期の最終候補者に 23位の方がいるのだが、この方は聴講生からの途中参加で元 2期生だったこともあり、特殊な例として割愛させて頂いた。すみません)

 

史上初? 最終候補者が全員新入生

また表2を見ると、第2期と第3期の最終候補者には先期からの継続受講生がいるが、第4期にはおらず、全員が新人生だったことも特徴的である。SF講座が期を重ねるごとに、継続受講生は増えているにもかかわらず(緑色)、最終候補が新人のみとはわりと異例のことである。継続受講生も得点上位には入っているので、両者の実力の差が縮まってきている……と言えるかもしれない。

 

まとめ

だいぶ受講生の提出数が増えてきているが、講座のシステム自体(と講師の数)はあまり変わっていない。主任講師ががんばってすべての作品を見ているが、評価からこぼれ落ちている作品も増えているかもしれない。より多くの受講生を評価するには、受講生同士で講評するか、特別賞を増やしたりする等、なんらかの対策が必要かもしれない。(来期は受講生数そのものが減るかもしれないが)。

 

 

★元データ(得点)

https://school.genron.co.jp/works/sf/2016/scores/
https://school.genron.co.jp/works/sf/2017/scores/
https://school.genron.co.jp/works/sf/2018/scores/
https://school.genron.co.jp/works/sf/2019/scores/

★ 最終候補者

https://school.genron.co.jp/works/sf/2016/subjects/11/
https://school.genron.co.jp/works/sf/2017/subjects/11/
https://school.genron.co.jp/works/sf/2018/subjects/11/
https://school.genron.co.jp/works/sf/2019/subjects/11/

 

 サムネ用

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*1:たとえば受講生が30人でそのうち25人が梗概提出した場合、25人の総得点は10点+(30人-25人) + 22点 =37点で、受講生が40人でそのうち25人が梗概提出した場合、25人の総得点は10点+(40人-25人) + 22点=47点になる

*2:変動係数(標準偏差/平均)とは、スケールや単位が違う2つのデータの分散を比較するためのものであり、ほぼ分散と考えていい。この値なら受講人数の差も吸収できる。