まほうのことば

小説の新人賞などに応募しています。本の話や創作の反省。黒田なぎさ

感想会追記

感想会で言えてなかったことの追記です。返信不要です。

 

 

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★「ゲスト講師らの『なにかふわっとしている』的なコメントについて」

 

梗概の書き方はほとんど完ぺきだと思うので、「とても読みやすいけどおもしろさが足りない」的な意味だとは思います。

 

① 前回のゲスト作家が「ここが読みどころだっていうのがわからなくて」「もっとキャラクターを強めないと、どこにでもある話になりそう」と仰っていましたが、すこし梗概の掘り下げが足りないのかなと思います。個人的には、主任講師が言っていた「家電がどうやって活躍するかもっとアイデアを詰めれば」に賛成です。そちらのほうがSF的にも面白そうです。
 自分の場合は、梗概で「テーマをどんどん掘り下げていく」傾向にあるのですが、本所先生の場合は、加速したり色々ギャグを盛り込んだ方が良いかもしれません。ただ、テーマは絞った方が良いと思います。(あまりこういうコメディを書いたことがなく、アドバイスが乏しいんですが)

 

(② 似たようなAIコメディとしては、3年前の選出梗概はこんな感じなものもありました。AIが製作者のもとまでがんばって移動する話です。)

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③ また、本当の上位(最終候補レベル)には、コメディだけだと難しいかもしれません。読みやすい作品でも、SFとしてハッとする要素、新しい要素、考えさせられる要素、があると良いかもしれません。『最適なPAL』は評価されていましたが、家電AIの視点でいろいろがんばるというのは、商業の既存作品でもあまりなかったんじゃないかと思います。(自分の観測範囲で)。

 最終実作も48,000字くらいあるので、なかなかコメディだけで押し切るのは難しいかもしれません。今回の『教育SF』や『意思決定の多くをAIにゆだねた人間はどうなるか』等をもっと掘り下げると、おもしろいSFになりそうではあります。(ただ、すでにたくさん書かれたテーマもあるので、注意は必要です)。このあたり、コメディとシリアスのバランス、笑い以外の感情(最後にちょっと感動など)は、本所先生が読んできた商業作品を参考にしてください。かなりレベルの高い話かもしれませんが……。

 


④ 手前みそですが、自分が3年くらい前に初めて梗概選出されたのは下記の梗概でした。
当時はネタがほとんど思いつかず、ネタを深めるにはこれしかないという感じで、ぎりぎりまでストーリーづくり&資料あさりをした記憶があります。
(ロボットが葬儀屋をする話。実作は途中で終わってるので読まなくて良いです)。
いま読むとけっこう暗い話ですね。 


(これはゲスト作家の法月さんだけに推してもらい、主任講師にはNGでした。しかもロボットの雰囲気が60年くらい古いので、参考にするのはまずいと思います笑。梗概全体としては50点くらいですね)
 
ここまでテーマに一点突破しろとは言わないですが、印象に残っていたので。

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① 感想会で薦められた『滑車の地』ですが、泥に埋もれた惑星でたくさんの塔が立ち、そこで人たちが暮らしている話だったかと思います。塔と塔とのあいだに滑車とワイヤーがあり、泥のなかには化け物がいっぱいいて、ワイヤーから泥海に落ちた人がどんどん食べられます。そのなかで航空機?に乗る少女と男性の話だったかと思います。
 
これがなぜ評価されているかは自信はないですが、「いままで見たことない世界」がやっぱり大きいかなと思います。ただ短編で毎回ていねいにまるごと世界をつくってたら時間が足りないですね。(おそらくこの短編も連作・長編になると思います)。
 
② 今回の方野先生の梗概ですが、すでに梗概の書き方(ステップ①)は完ぺきだと思います。あとはどれだけおもしろくするかですが、いまはいわゆるファンタジー世界を間借りしてる感じで、オリジナルの部分がすこし少ないかと思います。オリジナルをだす方法ですが、やはりニンフの習性、ニンフがなぜ作られたか、ニンフがこれから惑星で何をするのか、などを深堀りすると良いかと思います。(それによって世界や歴史も変わってくる)。世界丸ごとつくるのは大変ですが、ニンフとその周辺の世界設定くらいならいけるだろう、という感じです。
 
③ 初めのほうの感想会で言いましたが、「世界をひとつ作っておいて、じつは世界の秘密はこうだった、とラストに飽かすのが、SFのひとつのパターン」でした。「パンデミックで皆冬眠していたが、じつはパンデミックは起きてなかった」とか、「政府の陰謀だった」とか。今回のニンフの話はそれと同じで、「じつはニンフは〇〇が理由でこの惑星のために必要だった」みたいなものです。「世界の秘密」は「世界」でなくてもよくて、AIロボットの秘密とか整形ダニの秘密とか家具AIのしくみの秘密とかなんでも良いです。これがうまくいけば、B評価以上はカタイと思います。
 
④ (SFのもうひとつのパターンは、「ものすごい無理難題が起きたけど、SF的に鮮やかにそれを解決する」とかです。映画で宇宙人とかが攻めてきて、科学レベルも向こうの方が圧倒的に上で、人類が滅びそう、となったときに、「じつは宇宙人はこれが弱点」「宇宙人と取引して去ってもらう」とかで、SF的に解決するものです。最近で言えば『三体2』とかがそうで、三体星人が地球に向かってきていて、もう絶望的、どうやって解決するか、という。読者としては、「ああそうやって解決するんだ」という驚きです。)
 
梗概の評価の仕方については、ブログにも書きましたが、主任講師の書評コラム本が良いかと思います。
https://chrestomanci.hateblo.jp/entry/2020/12/21/135943

 

 

 

 

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(実作を書くやる気がなくなりそうな講評なので、話半分に聞いてください)
 
 
① SF的には、もう少しARの要素を生かしてほしいかなと思いました。兄の幽霊や燃えている様子だと、「本当にただの幻覚ではないか」という感じで、AR設定がなくてもできそうな展開だからです。例えばフラッシュアイデアですが、なぜか樹にARのポップアップがでてきて、主人公は樹の話していることがわかるとか、樹のセリフが出てくるとか、樹の寿命があと何年かわかるとか。(なぜそうなるかの説明は必要ですが。主人公は普通の人よりは樹にくわしそうなのと、長年このエリアの樹を見すぎたせいで、脳の記憶が作用して樹の気持ちがわかるようになったとか。なので主人公だけ見えるという理屈)。そうするとストラディヴァリウスの話もからめそうですし、森林地帯展示エリアもガンガン描写できそうです。そのあと燃やしてもいいですが。

 

兄弟子の話とかも良いのですが、あまり人間関係をテーマにすると、せっかくの独自の博物館設定、SF設定が書きにくいかなという気もします。
今回は設定は良かったのですが、ストーリーがちょっと設定から離れたかなという気はします。いろいろ資料を調べられたと思うのですが、それが効果的に生かされているかどうかはちょっとわかりませんでした。 


② 吉羽先生はイールニール→妖精→スラディヴァリウスと来て、記憶ではイールニールが一番評価が高かった気がします。(個人的には妖精)。不思議系?と言ったら変ですが、「なんか不思議なことが起こっている」というのは良いと思います。あまりこういう小説を読んだことがないので、アドバイスできることは少ないですが、その不思議なことに「なぜそうなるか」の理屈や理論をどこまでつけるかは、作風とかリアリティレベル次第なので、なんとも言えません。(「なぜそうなるか」でSF的に面白い理由をだして「なるほど、おもしろい」と思わせるのはセオリーです。反対に、理屈を書かずに不思議なシーンでどんどん押していくのは、かなりセンスが必要そうです。)。どちらにしても、「SFとしてあまり見たことない設定だな、シーンだな、新しいな」と思わせるのは大事だと思います。

 

 

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