まほうのことば

小説の新人賞などに応募しています。本の話や創作の反省。黒田なぎさ

ペンギン・ハイウェイ

・まだまだまだSF大賞

 

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

 

 ・2010年のSF大賞

・いつもの森見先生の文体ではない、らしい。他を読んだことがない。

・小学生の「ぼく」は大人びており、毎日いろんな研究や探検をしている。いつもノートにメモを書きまくっているが、少しぬけたところもある。ある日ぼくが住んでいる街に🐧の集団が現れた。どうやらそれは、ぼくがあこがれている近所のお姉さんが関係しているらしい。あるときお姉さんがコーラの缶を放り投げると、缶が突然ペンギンに変身した――。やがて街には謎の球体【海】と、ペンギンを食べる【ジャバウォック】が現れ、僕らの研究と探検が始まった。

 

・350ページあるが、実は200ページくらいまでは少し退屈で、300ページくらいまでは厳しかった感じがある。そこまでいかないとあまり謎に展開がない。【僕】の毎日の探検や思うことや日記、描写を好きにならないと厳しいかもしれない。読んだ後のすっきりした感じは良かった。(最初、1章くらいで🐧の謎は少しわかるのかと思ったが、最後までいかないとわからない)

・ノートを取りたくなる。ノートを買ってしまった。

・【僕】の街の探検などはよかった。昔そういうことは本当によくやったよねという。ここの川と道がここにつながってるんだ的な。地図とか作って。正直グーグルとかあると地図なんか作る必要がないのだけど、【自分たちだけの地図】をつくることに意味がある

・【海】はこちら側にあるのではなくて、向こう側にあるのでは? 海とは穴のことでは?という発想はおもしろい

・僕がここで交通事故に合うとする。僕が死んだ世界と死んでない世界に分かれるんじゃないかって。なぜそう思うかというと、このことを考える僕自身は、必ず生きているから。ぼくが内田君が死ぬのを見たとしても、それが本当にウチダ君本人にとって死ぬということなのか、ぼくにはそれを証明できない。

・アオヤマ君はおっぱいが好きだから、お姉さんのことが好きなんでしょ。でもお姉さんにはおっぱいが存在してる。おおいに存在してるね。

・片づけのコツ。よく使うものと、ときどき使うものを分けること。

・気になったことを、大きな紙に全部描いてごらん。そうしたら、なにとなにがつながっているか、よくわかるはずだ。必ず大きな一枚の紙に。

・アニメ映画化、2017年に実写映画化。

フォマルハウト

フォマルハウトの三つの燭台〈倭篇〉

フォマルハウトの三つの燭台〈倭篇〉

 

・著者は星雲賞、SF大賞を何度もとった神林長平氏。 

フォマルハウトの燭台に3つ火がともると、世界が終わるという。その燭台を手に入れた中年の男、林蔵がAIに関する事件に遭遇。燭台に火を灯すと不思議なことが起こり、事件は解決するが、やがて燭台に3つ目の火を灯して……。

 

★『1章:兎に角(うさぎにつの)』:林蔵の友人がもつ、AIつきのトースターが自殺した。林蔵が話を聞いていると、ツノを持った兎ジャカロップが燭台を持って現れる。林蔵が燭台に火を灯すと、トースター自殺の真実が明かされる。

 

★『2章:モデル♯9ケース』:林蔵の友人の獣医師が裁判員を務める事件。横領事件の犯人は『自分を殺した』と供述する。その被害者は林蔵の隣人だった。

★『3章:彼の燭台』:実家から山の寺へ追い出された林蔵。気がつくとヒューマノイドロボットが寺に住み着き、林蔵に給料を要求する。困った林蔵は、ついにフォマルハウトの燭台の3つ目に火を灯す。すると世界から夜はなくなり、時間がめちゃくちゃになって……林蔵は元凶を見つけるために乗り出す。

 

 

・おじさんがいっぱい出てくる、このおじさんが好きになれるかどうかで評価が変わる。林蔵おじさんはつるつる(?)の読書好きのおじさん。獣医師の伊能おじさんは超常現象はかなり苦手。

・最初は読むのがしんどくて、途中もダレてしまったが、最後のどとーの勢い。そしてきっと2回目読み始めると景色が変わる。(最初らへんの伏線が回収される)。今回のテーマが『意識』や『視点』で、視点がぽんぽこ変わっているからというのもある。

意識にわかるのは、自分は自分だ、ということだけだ。特定のだれなのか、というのはわからない。

 

 

 

ひゅーまに

 ・まだまだSF大賞祭り

My Humanity (ハヤカワ文庫JA)

My Humanity (ハヤカワ文庫JA)

 

 ・表紙はゆるいが、中はガチガチガチのSF。無骨さと汗臭さしか感じられない短編集。

 

★『地には豊穣』:人の経験や技術を、他の人にコピーすることができる技術「経験伝達」をめぐる事件。有能な人を大量生産することが可能。その技術は文化も破壊してしまうのか。

 

★『allo, toi, toi』:少女殺害事件を起こした囚人の話。自分の良心によって脳内にキャラクターを作る技術を埋め込まれる。ストレスや不安を察知して脳内で声をかけてくる少女 ”アニマ” 。「ケーキが甘いから好きなのか、好きだからケーキが甘いのか」。好きと動機、行動のちがい。

 

★ 『父たちの時間』:原子力発電所に利用されるナノマシン『クラウズ』が謎の大量増殖を始める。技術者と科学者たちの奮闘。硬くて後半は読めなかった……

 

★きになったところ

・脳内検索ができる。攻殻機動隊みたい。

・自分が考えたことを文字に出力できる技術。死ぬ間際の断末魔。うひゅう。

・アニマすごい。脳内でささやいてくるキャラクター。それはキャラじゃなくて、自分の脳が作り出した分身みたいなもの。2重人格とは少し違う。すげーけどこええ。

 

 

★ チグリスとユーフラテス。つづき

・SFはありえないような新しい世界を創造するのが目的なのかもしれない。だが人はそれを求めているのだろうか……もう現実の方が圧倒的にSFっぽいし謎だらけだし、わざわざ新しい世界を作る必要があまりないような気もする。オデッセイもそうだったが。これはファンタジーとかとはちょっと違うのだろうか。

 ・コールドスリープから目覚めた人たちによって語られるナインの歴史。Amazonのあらすじではこれを「惑星ナインの逆さ年代記」と読んでいる。独特で良い

惑星最後の住人

・まだまだSF大賞祭り

 

チグリスとユーフラテス

チグリスとユーフラテス

 

 ・SF界の大御所、新井先生のSF大賞受賞作。500ページ。1999年。
 地球から移住した惑星ナインの住人たちは子どもを生むことができず、絶滅の危機を迎えていた。『最後の子ども』のルナが生まれた後、コールドスリープから目覚めた人たちの記録。久しぶりにすごいなぁと思った本。ちょいネタバレ。

 軽快な文章とホワンとした表紙と対称的に、中は結構エグいテーマ。(タイトルは合ってるような合ってないような)SFってそんなものかもしれない。このあいだ映画化された『火星の人(オデッセイ)』を思い出した。惑星でひとり生きる感じ。最初はあまり読むのが進まなかった。

 

★あらすじ: 『最後の子ども』である老婆のルナしか存在していない惑星ナイン。そこでコールドスリープしていた人たちが入れ替わりに目覚め、その人たちが手記(と回想)を残していく。最初のマリアは宇宙歴300年生まれ、つぎのダイアナは200年生まれで、惑星ナインの歴史がだんだん明かされていくというしくみ。(コールドスリープのそれぞれの理由は、不治の病にかかり、未来の医療技術に期待したからで、大体の人は目覚めてから数か月後に死ぬ。)最後は地球からの移住者であり伝説の女神である、レイディ・アカリ(穂高灯)がめざめる。

 

 

1章「マリア・D」:マリアがコールドスリープから目覚めると、そこには「最後の子ども」である80歳のルナがいた。マリアが生きていた宇宙歴300年ごろには、惑星ナインの住民は子供を産むことができず、人口減少の一途をたどっていた。マリアは妊娠することができる「超特権階級」の生まれで、出産するために生まれてきたようなものだったが、致死性の病気にかかり、出産が不可能になってしまう。マリアとは対称的に、つぎつぎと子どもを妊娠する幼なじみのイヴ。嫉妬するマリア。とうとうイヴは、孤独を宿命づけられた最後の子、ルナを出産する。テーマは「妊娠と出産」。

 

2章「ダイアナ・B・ナイン」:宇宙歴200年ごろの住人であり、宇宙管理局の職員。ドまじめな女性。目覚めてからマリアの手記を読んだダイアナは愕然とする。宇宙歴200年ごろは急激な人口爆発と食糧危機により、ダイアナは人口減少策を推し進めていた。終盤、ダイアナは『最後の子ども』であるルナの正体に気づく。「食料危機と口減らし」。

 

3章「関口朋美」:宇宙歴100年ごろの住人。地球から移住してきた伝説の人たちの直系の子孫で、純血であり超特権階級、苗字もち。絵を描くことが好きな画家だったが、特権階級のヒイキによって生活できていた。「人類が絶滅した今日、芸術に意味はあったのか。絵を描くことに意味はあるのか?」。朋美は最後にルナにあることを託す。

4章「レイディ・アカリ」:地球から移住してきた伝説の日本人であり始祖。(中はふつうの日本人)。キャプテン・リュウイチの妻。当時、地球から惑星ナインまでは航行に30年かかり、まさに命を懸けた移住だった。この章だけで250ページもある。前半は宇宙飛行士リュウイチとのラブロマンス、後半は『最後の住人』ルナとの生活。共に80歳を超えているアカリとルナの最後は。惑星ナインは滅びてしまうのか? テーマは「人は何のために生きるのか」。

 

★ きになったところ:

・最初は夢の思いつきから始まったが、何回もプロットを練り直したらしい。で500ページ。まさにSFという感じだが、SF好きの人たちは常にこんなこと考えてるのかな……。

・キャプテン・リュウイチとか「最初の住人」の12の苗字たちとか、和名なのにかっこええ……なんでだろう。これはアレかな。異世界で「カタナ・ブレード」がかっこよく見えるやつかな

・惑星ナインだが地球の暦を使っているので、年の初めの月が毎年ちがったり、年末の月が2日しかなかったりする。楽しい

・惑星ナインの子どもたちはなぜか神の名前をどんどん取っている。アダム、イヴ、イザナギetc。(全員日本人なのだけど)。人口減少しているときはほとんどの赤ん坊の名前がアダムとイヴだったとか。出産することに記者会見が開かれ、3兄弟が生まれたときはパレードが開かれた。

・男性が生まれてくる率が高いが、なぜか乳児死亡率も男性が高い。

・地球の生活とのズレ。男女共働きなんてシンジラレナイ。絶望。

・マリアの破天荒ぶりがすごい。夫ゼウス涙目。

・Gを食べてしまうダイアナ。ここらへんは三人称で書かれているが、特徴的すぎる……一人称でもいいのに。ダイアナのまじめな報告書がかわいい。こういうの書けるのすごい

・ルナの無知ぶり。いや、無知なのかどうなのかよくわからない。常識とのズレはすごい。生まれてからほとんど「子ども」として扱われた、惑星最後の末っ子。どこまでが本気なのかわからないが。

・人工子宮。名字の存在。ナインでは名字がある人が特権階級を持つ。武士みたいだ

・ルナは憎しみと絶望と悲しみで生きている

・新出単語:あたら、ことほぐべき、うべなわない。

フィリピン留学:いろいろ

・なんだかぐちっぽくなってしまったのでいいところ

 

★ ルームメイトに恵まれていた。あとバッチメイト(同期生のことらしい。同時期に入学した生徒のこと。ただ検索したらフィリピン留学のことしか出てこない)に恵まれていた。2キャンパスに通ったけれど。宿題のしかた、学校のルール、レッスンの悩み、勉強のしかた、を聞きまくっていた。(良い人が集まってくれた、というとき、どうして幸運だった、恵まれていた、というのだろうか。自分でコントロールできないからだろうか。もっと幸運はいろいろあるはずなのに)。

 

★ 肝心の英語の上達に関しては、よくわからない。私の場合(600点くらい)、事前学習期間が短かったのでインプットが少なく、アウトプットがうまくいかなかったというのもある。ただ発音は多少よくなった。あと英語勉強はこんな感じにするのかみたいな中間ゴールが見えた。(つまりあまり成功とは言えない。)事前勉強はたくさんしたほうが良いと思う。(トーイック1800単語を覚えてから行くとか)。あと3か月くらい行った方が余裕がある。私は短期だったのでレッスンをギュウギュウにつめ、自習する時間があまりなかった……

★ まわりの子たち(学生は文系が多かった)は就職活動をむかえ、海外インターンシップを考えている子たちが多かった。私は海外で働く気がシュンとなくなっていたのだが、そこからくるパワーは何なのかと思う。日本語禁止校は学生数が少なく、毎回ランチが英語おしゃべりタイムみたいな感じでおもしろかった。初対面と人とつねに話していい、のような感覚はゾクゾクする。(日本語OK校ではついグループを作ってしまいがちで……そのぶん濃い話ができるのだけど)

★ ネット環境は自分でちゃんとしておくべきだった……ポケットWiFiとか。余暇の時間というより、英単語検索、英語作文にとって、電子辞書では追いつかなく、ネット環境はほぼ必須じゃないかと思う。

★ もうちょい観光とかしたかったけど、いちいちタクシーを使わないといけないのがしんどくてだらけてしまった。海行きたかった。

 

フィリピン留学:反省

・ここは反省の間

 

★ 事前学習をもう少し長めにとって、インプットをたくさんやるといい……というのはわかっていたことだけど、実際そうである。ただまあ4か月後とかの予定は私は組めないので、これはアカンという感じである。(「英語勉強するか」という気持ちが4か月も続かない。)

・音読学習をするべき、と学校が強く推していたのだが、結果的にあまりやらなかった。これは反発していたというより、レッスン数が多くて時間がなかった……音読の重要性はなんとなくわかったつもり。ただやっぱり疲れるので、ぱっとやるかどうかはわからない。

・失敗か成功か:と問われたら、おそらくこの留学は失敗になっている。もちろん収穫はかなりあったのだけど、あまり計画的でないというか……。1カ月はかなり短期なので、それでちゃんとレッスンを一通りこなしたのは頑張った。追加料金レッスンは微妙だったが、発音レッスンがけっこう進んだのは良かった。

★ 今回はルームメイトに恵まれた。本当に。ナイスガイもいた。反対に私はそういう存在になっているかというと、わからない。可もなく不可もなく、嫌なやつでなければいいかという感じである。

★ 笑うこと:どうも私は反応の基本は「笑い」であり、これはいいときと悪い時がある。笑われてつらいときもある。では基本の反応は何にすればいいのか。おそらく共感とか同意ではないかなあ。

SF大賞まつり

・ヨンダー

 

屍者の帝国 (河出文庫)

屍者の帝国 (河出文庫)

 

・早逝した伊藤ケイカク氏作のプロローグを、円城塔氏がひきついで書いた。SF大賞の特別賞受賞。のちに映画化。正直このカバーは映画販促カバーなので、本当はまっくろくろの無骨な表紙。こんな感じ。

屍者の帝国 ヴィクターの手記セット

★死体を機械でよみがえらせて使役できる19世紀のイギリスが舞台。屍体技師?の主人公はスパイとして世界を転戦するうち、屍者を使った恐るべき兵器と、屍者の本当の仕組みを知る。

 

★ 気になったところ

・常に痛覚を刺激して運動性能を引き出しています。地獄の苦しみですね。

・あなたは他の人間の魂をどうやって感じますか?それは独我論だ。この世界で魂を持つのは自分一人なのだと主張する。他の人間からの説得で、自分を独我論者と認めることは起こり得ない。

・人間にいろんなプログラムをインストールさせて強化する。キアヌみたい。カンフーをマスターした。

・人民への奉仕のために自ら命を絶つわけだ。その方がより有益な社会を設計できるからな。屍者のほうがよりやくにたつわけ。

・彼女は理解できない。ロボットだからね。彼女は私がグラントを殺したいほど憎んでいると決めつけている。彼女はずっと計算している。最高の舞台、最高の状況でグラントを殺すと思い込んでいる。しかし私はそのつもりはない。→ 抜けられないループ

・バーナビーは味方ごとぶっとばす。そっちのほうが、敵も予想はつかんだろう。

・機械ごしに話そう。そいつが筆記する。それでいいかい?サラサラと書き始めるからな。

・わたしは世界を見た。ワクワクした。

・最終的に『意識』は、なんか虫みたいなものが代わりに人間を動かしている、ということになった。それか『言葉』か。虫の多数派と少数派がゴニョゴニョしているらしい。言葉による菌株の不死化。

・ラストシーンはずるいのでは。視点を変えては。

 

マルドゥック・スクランブル The 1st Compression 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)

マルドゥック・スクランブル The 1st Compression 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)

 

マルドゥック・スクランブル The 2nd Combustion 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA) マルドゥック・スクランブル The 3rd Exhaust 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)

 ・SF大賞受賞。おそらくたくさん映像化された。娼婦だった主人公が詐欺師に殺されるも、最高級の機械の体を手に入れ、敵をボコボコにする話。自分から離れたすべての機械を操作でき、なんにでも変形できる最強の相棒とタッグを組む。第1シリーズは3巻まで、このあとシリーズは続く。

 

★なかなか本編に行かなくて、すごいと思った。1巻の終盤で本格的バトルが始まり、2巻からはカジノで賭博ゲームがはじまる。(カイジみたいになった。)このカジノ編がめちゃ長いのだが、(おもしろいけど)これでいいのかという感じもある。ルーレット、ブラックジャック前半戦、ブラックジャック後半戦とめちゃ長い。でも何回も読み返す感じにはなる。(難しいから)

★気になったところ

・スナークの描写。すべてわかるという描写

・敵側のかませ犬感。でも長い過去がある。

・カジノでの描写。よく「これでいけるな」と思ったなと思う。(超長い)。バトルじゃないんだぜ。地味ですごい。いやおもしろかったけれど。