まほうのことば

小説の新人賞などに応募しています。本の話や創作の反省。黒田なぎさ

第3回実作・ハンセイ

 

あらすじ

”ストーリー自動生成AI『ミューズ』の命令により、毎週異なるヒーローを演じるAIテピス。視聴率によってストーリーが様々に変わるなか、現実世界では大変なことが起きていて…。”

 

 

★ 作品について
(1)  作中作
 今まであまり劇中劇などを書いたことがなかった。設定やストーリー、キャラクタが2倍になるので大変。しかもフィクションと現実がリンクしていないといけない。今回は主要キャラだけでも4×2=8人と過去最多。名前考えるだけでもしんどかった。
 もう少し、もっとみんなキャラクタをしっかりデザインしたかった……。残念なことに、短編はあまりキャラクタをデザインしなくてもなんとかなる。ただ自分の中で髪の色や服とか決めておかないと、頭の中で動いてくれなくて困る。
 全部0から考えるのは大変だったので、冒頭の鉄塔シーンは映画『スパイダーマン』から。また「50年後くらいにつくられるSF映画」をイメージしていたのですが、あまり未来感はないかも。
・作中作を3~4作つくる方向もあったが、ゴチャゴチャになりそうだったのでほぼ1作に。というかそんなにストーリーのアイデアが出てこない……。

 ちょこちょこ作中作のあらすじが挿入されているが、ぶつ切れになるのであまり推奨されない。ただ、毎回テピスがあらすじを説明すると変だし、本当はもう少しシーンで説明するべき。

 

(2)  AIアクターならではの演出
 今回のAIはとても人間寄りなので、「AIでなくても人間でよかったのでは?」という疑問が生まれがちだった。AIアクターならではの手法として、① 役者と役者で高速通信のやりとりができる(アクションしながらでもやりとりができる)。 などを考えていた。ほかにも
② 何百回演技をしても疲れないのでシーンが山ほど作れる。
③ グランヴァカンスのように、AIが環境・設定などにも介入操作できる。
④ グラフィックや性別の制限を受けない 
⑤ 視聴者ひとりひとりの好みに合わせた映像がつくれる(かも)などがある。
逆に人間にできてAIにできないことは、①グラフィックが固定されていないとファンが付きづらい。とか

 ゲームAIのアイデアからいろいろ頂いた。① 各キャラクタAI がほかのキャラクタに命令する ② いすや机などのオブジェクト自体にAIをしこむ、など。

 本当は主人公テピスが、男性キャラ、女性キャラ両方を演じることができる、とかだったらもっとAIっぽかったが、どうしても自分がイメージできなかった。やはり普通のエンタメのように、男性、女性(ジュリア)、悪役、がいないとバランスが取れなかった。

(3)ネタバレ・ 最後の叫びの意味(空白)
 現実世界では、人とヒューマノイドが共存している(という設定)。が、途中で人とロボットの戦争になり、途中までは人が優勢だった。日本とアメリカが戦争するとき、日本が勝つようなプロパガンダ作品を欲するように、人がロボットを憎んで壊すような作品が流行った。しかし、戦争は最後にロボットが勝ち、ロボットだけの世界となり、ヒーローやヒロインはいらなくなった。
 テピスくんが最後まで残されたのは、彼が、人とロボットが共存していたころの倫理ルール(正義)をもっていて、現実世界のロボットたちがそれを忘れないように(?)残した。

人工知能の作り方 ――「おもしろい」ゲームAIはいかにして動くのか

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★執筆について

・しにかけた。 
・今までで一番厳しい実作だった。自分の中では30点くらい。実際は12000字くらいだが20,000字くらいは欲しかった。

・梗概の時点であまりプロットができておらず、それからもプロットが作れなくて、多めの要素が整理できなかった。いつもは紙にプロットを書くのだけど、ほぼ決まらなくて、とりあえず書いてみても冒頭のシーンだけで手が止まった。そこからプロットなしで無理やり書いた。体重がゴリゴリ減った。
 時間がなかったわけではない。(確かにきびしいスケジュールだったが)。とにかくPCの前で手が止まる。正直、0枚提出を覚悟していたが、〆切の●日前から書いて、形にはなった。後半はとても駆け足気味。

 

・反省と収穫?
①プロットなしでも、無理やり初稿というか草稿(絵で言うところのラフ)を書くと物語は生まれる。頭ではわかっていたのだが、ただ今回無理やり書いて、脳が死んだ。また締め切りに追われているとなかなかできないかもしれない。もうすこし「草稿」のレベルを下げたほうがいいかもしれない。つまりああなってこうなって、なんやかんやあって、の文章レベル。
 ②ある個室で書くとゾーンに入って集中できるが、締め切り前にできるかどうかわからない。

 

★ 本番に弱い
 プレッシャーに弱い。きっと100点を狙おうとしているからよくないのだと思う。30点とか40点とかでもいい、と思ったらわりと書けたりする。ただ、「ここが大一番だから」と考えることはわりとよくある。きっと漆塗りのように、うすく何度も書いていくのが良いコツなんだろう。文字はデジタルなのでなかなかラフっぽく感じないが。たしか草稿はメモ帳に、本番はWordで書く、という方もいた。やはりそうやって意識して分けたほうが良いのかもしれない。

 

2019/09/06

★感想会を受けて

(1) 3つの世界
 どうしてこうもプロットに苦しんだのか。おそらくこのお話が、『テピスたちのいるサイバー空間の世界』、『作中作の世界』、『現実の世界』と、3つのレイヤーが相互に影響しているからかなと思う。現実世界がこういう情勢(ロボットと人間の戦争とか)になったらこんな作品を求めるだろう、そうすると作中作がこうなり、テピスたちがこう思うだろう、みたいな3つの時系列があるのだけど、自分はそれを1つの時系列で考えようとしてしまった。言ってしまうとグランヴァカンスの現実世界・仮想世界にもう一層世界が追加されたような……(言い過ぎか)
 梗概の時点では『現実の世界』と『テピスの世界』のほぼ2層構造で、だいたいうまくいった。2層までなら頭のなかでなんとかなるし、大体の作品は、現実世界と作中作の2層構造(かな?)。プロットを考えるときに「最初の場面、次の場面……」と世界がひとつのように考えてしまったので、ゴチャゴチャして考えられなかった。3つのレイヤーでそれぞれプロットを考えればよかったのかな。3つの世界とかDQかFFかゼルダだろ……。

(2)最初のCAST
 やはりネームドキャラが多くて混乱したようで、castリストを書いたのは良かったが、本当は読み返さなくても読めるようにしないといけない。カタカナと漢字で分けるとか。

(3)途中の作中作のあらすじ
 ぶつ切り感になるのであまりよくないと思ったが、むしろわかりやすくて良かった。いちおう話に沿ってあらすじも書かれているから、あまりぶつ切れ感はなかったのかもしれない。