まほうのことば

小説の新人賞などに応募しています。本の話や創作の反省。黒田なぎさ

知性化機械と少年 リライト

・講座の受講生の梗概を自分なりに書いてみました。(作者様確認済み)

・元となった梗概

 

どちらから読めばいいのかは……情報量は同じですが、やはり元の梗概から読んだほうがいいかも。

・元の梗概が少し読みにくく、アピール文にいっぱい面白そうなこと書いてるのにもったいないなぁ……と思うことがあり。素材はいっぱいあるので。

・人の梗概をリライトするの、作者さんにインタビューしないと色々わからないし、大幅にアレンジしても、別にその実作が書けるわけでもないので微妙な気が……。うまい人の梗概をリライトするのは勉強になるかもしれない。(元の梗概を何回も読み直さないといけないので)

 

★★★

 

 『こんにちは、シンイチ、それとヨシタカ。こちらは狭くて暗くてタイクツだ』
 大学院生の信一は、指導教員である金沢夫妻のもと、理想脳式のAI、グノーシスを研究していた。通常、人の脳を大型計算機上に再現する理想脳<グノーシス>は、他のコンピュータと比較して爆発的に計算が早いが、臨界点を超えたところで原因不明のうつ病を発症し、自ら機能停止を起こしてしまっていた。しかし、信一と金沢夫妻が管理しているグノーシスはちがった。グノーシスが人格をもち、通信機を通して人間と対話を行い、家族の一員としてコミュニケーションを図ることで、例外的に精神が安定していた。とくにこのグノーシスは信一と、夫妻の息子である小学生の義隆と仲が良く、よく3人で通信機を通してやりとりをしていた。グノーシスはセンターに安置された大型の計算機でありながら、家族の一員であった。

 幸せな生活が続いていたある日、金沢夫妻が何者かによって殺害されてしまう。現場には壊れたグノーシスの通信機が残されていた。グノーシス反対派による犯行と思われたが、犯人は見つからない。以降、息子の義隆はふさぎこみ、さらにグノーシスに依存するようになる。
 3年後、信一は研究者仲間の女性と結婚し、義隆を養子としてひきとることにする。喜ぶ義隆だったが、今度はその養母が何者かに暴行される。義隆は、その犯人が、両親を殺したグループと同一犯だと確信し、グノーシスの通信機を持って家出をする。数日後、グノーシス反対派の大量死亡事件のニュースが信一の耳に入る。

 幼い義隆が彼らを殺したのだろうか。いや、義隆はあのグノーシスによってそそのかされ、殺人に手を染めているのかもしれない。グノーシスはネットワークを通じて作業用機械を起動させることもできたが、それには人間の承認が必要だった。グノーシスが通信機を通じて義隆を誘い、反対派を消しているのではないか。不安に思った信一はグノーシスと通信を行う。グノーシスは、「自分の製作者や、義隆と信一の大切な人を奪った人間を殺す。義隆と信一を守るために、家族以外のすべての人間を殺して機械だけの世界にする」と告げる。グノーシスは復讐こそが、人間社会にとって合理的で必要なことだと考えていた。

 信一はグノーシスが置かれた研究棟へと向かう。グノーシスは様々な装置で抵抗するが、家族である信一を傷つけることはできない。最下階、大型計算機がずらりと並んだ部屋に、義隆もおり、家族であるグノーシスを守るために信一に抵抗する。グノーシスは最後の抵抗に冷却用の液体窒素を放出するが、信一はすんでのところでグノーシスの機能停止に成功する。液体窒素によって信一の体がボロボロになるなか、義隆の体からも金属の筐体が見え始める。じつは義隆こそがグノーシスの一部であり、義隆が外部情報をグノーシスに送っていたのだった。グノーシスは、人型アンドロイドとの対話を通じて精神を安定させていたのである。グノーシスの機能停止により、義隆の機能も同期によって停止する。信一を失いたくない義隆=グノーシスは、最後の力を振り絞り、信一の体を抱えて脱出する。義隆は、途中からグノーシスと自分の人格が離れていき、家族を守りたい衝動と理性がぶつかって苦しんでいたと言う。信一は機能停止していく義隆を抱きしめ、グノーシス研究の礎になることを誓う。

 (1200〜1400字程度)

 

グノーシスがどういうものかあまり想像できなかったので、キャラ化しました。最初からグノーシスを喋らせることで主役がパッとわからせるようにしました。また、グノーシスをキャラ化することによって、義隆=グノーシスであるのをバレないようにしていますし、グノーシスの家族っぽさも出てるかなーと思います。

※ 早苗と玲子はカットしてしまいましたが、家族愛を強調するために早苗はいていいかもしれません。実作では全員書いてよいと思いますが、梗概で冒頭から6人の登場人物が出てくるのは少し多いです。よほど特徴的なキャラでない限り、そもそも1200字で6人は多い気がします。

※端折ってしまいましたが、もう少し、義隆=グノーシスの伏線を梗概で書いたほうがいいかもしれません。途中の展開。

※梗概では義隆がちょくちょく家に帰ってくるのですが、(伏線にはなるかもしれませんが)、あまり緊張感が出ない気がしますし、義隆を助けるためにグノを止めにいく信一の動機も深まります。ただやはり、よほどすごいテクニックを使わない限り、途中で義隆=グノ説は見破られそうです。見破られても切なさと健気さで押し切ってよいかもしれません。

 

※テーマである『魂は計算機と体のどちらにあるのか』『制限された機械はどう行動するのか』をもっと書くためには、やはり最初から義隆=グノがわかっている時点で書いたほうがたくさん書ける気がします。(あるいは、そのプチ叙述トリックを冒頭につかって、物語のキャッチに使うとか)。自分もこのテーマが面白いと思っていますし、外部装置アンドロイドという設定も面白いのですが、いかんせん叙述トリックを入れてしまうと大半を隠さなければいけません。義隆=グノが判明した後に、書けることがいっぱいありそうです。(だんだん義隆とグノーシスの感覚が離れていったとか、途中から体と脳のズレがおかしくなってきたとか、家族と接する機会の多い義隆と、そうでないグノーシスの意識がずれていったとか)。