まほうのことば

小説の新人賞などに応募しています。本の話や創作の反省。黒田なぎさ

第7回ゴッドガンレディオお返事

・ラジオで拙作に言及頂いたので、お返事記事です。

 

 

・言及は1:17:52 ごろから

あらすじ

 気弱な男子高校生のソウマには、伝説の神ヴィシュヌの人格が宿っていた。彼のことが好きなシイカは性格正反対の2人に振り回されるが、因果は数千年前の神話までさかのぼり…。SFラブコメディ

 

●梗概がない
 もともとは第3回新井素子先生の『生き物をつくってみよう』で提出した梗概でした。「へんな生き物」を考えていて、「宇宙を3歩でまたぐ」「化身が10体以上ある」「幻術を使い、実はこの世界そのものも幻術で作っている」というヴィシュヌ神を選びました。そのときから梗概は結構変わっています。やはり0から資料を調べるのは大変でした。(というのと、前回の『はじめましてSci-Fiさん』が大変すぎた)
 叙事詩の『ラーマーヤナ』を読んで、最後、ラーマ王子がシータ姫をふって自分は驚きましたが、この展開がなかったら作品ができませんでした。

●展開が力業
 スケールの大きな話が苦手な上に、不老不死かみさまのオチをどうすればいいのか、わりとしんどかったです。(不老不死なので大体の目的は達成されてるしオチが難しい)。またどうしてソウマにとりつくのか、シイカは何のためにいるのか、オチの伏線を貼れるか、が大変でした。
 そもそもこういう短編では、「すでにソウマ=ヴィシュヌだとシイカが知っている」時点からスタートするのがセオリーではないかと思います。初めましてのシーンから始まると、どうしても冗長になり後半の展開が急になります。

 

●宇宙にとびだすところ
 初めに思いついたシーンです。もっとていねいに書けたらよかったのですが、筆力不足でした。実際に人が宇宙に行くと科学考証が色々めんどうなので、神様パワーはすばらしい。神様はなんでもできる。

●ソウマくんとび降りヴィシュヌチャレンジ
 ヴィシュヌの謎パワー(?)により、体が丈夫みたいになりました。もっとボロボロで大変のほうがシイカの使命感が燃えたかも。ソウマくんが幼いのは、ヴィシュヌやシイカたちの性格と大きく対比させるためと、私が「モテる男の子」がよくわからなかったためです。梗概の段階では、ソウマくんはもっとイケメンスポーツバカ男子でした。

 

ラーマーヤナを教えてくれる先生(名前もない)
 唐突感がありますね。意見交換回でも「こいつを別の神様にするといいのでは?」という意見が出ました。本当は冒頭に登場する予定だったのですが、(シイカの友達の代わりとして)、シイカとギャル会話ができそうになかったのでカットしました。冒頭で屋上にいるシイカを叱っておいて、学園マンガによくいる先生と思いきや、あとで活躍、というほうが良かったかも。

●エッチな描写?
 私の趣味ではないのですが、ヴィシュヌがシイカの秘密と弱みを握るためにああいう感じにしました。『好きな人の別の人格と話せる』『考えてることがばれる』『シイカにとってヴィシュヌは邪魔な存在』を強調する感じでした。(あまり展開に生きてないですが)。別にエロさを出したいわけではないです。浮いているのはわかっていたので、もう少しマイルドな秘密にしたほうが良かったですね。シイカがソウマ君のために宇宙の本を読もうとして何回も挫折してたとか、恥ずかしい秘密。

 

●優しい世界
 意識というか、優しい世界しか書けないのが現状です。人が死ぬとかはまだいけますが、いじめとか悲恋とか好きなキャラ同士が喧嘩するとか、リアルな暗いことが書けず、弱点だと思っています。(共感性羞恥?とかいうのも高いらしく、恥をかくシーンも難しい)。今回のオチも、実はシータ姫は何千年の間にすでに別の男の人とくっついていて、ヴィシュヌがマジギレする、みたいなものも考えましたが悲しすぎました。よく主人公に困難さを与えるのがエンタメの基本と言われているので……。

 

●講義では
 先生には、『ライトノベルとしてならオチはこれでいいが、SFとしてはやはり、世界が広がるような、スケールが広がるような感じにしてほしい』的に言われた記憶です。飛さん回というのもあり、SF度合いが重要のようでした。今までSF要素を避けているところがあったので、次回はSFを詰め込む感じにしたいです。今回は自分で初めて実作と梗概を同時に出せて、「量」はそこそこうまくいったので、次は「質」にこだわりたいです。

 

意見交換会では
 シータ姫がもっとやばい感じ(?)の性格でもよかった。シイカももっと現代ギャルでも良かった。「好きな人と連絡するならLINEで良くね?」とか。
 → きっとシータ姫はシイカに影響されて、どんどんギャル語になりそう。
 もっと悪くてえぐいセリフが書けそう。いまはセーブしてる感じがする。その通り。
・一人称があまりうまくない。「いろいろあったけど~」など、過去を見るような視点で書いてはいけない。「あたしが」が多く、シイカから一歩引いたような視点で書いている。おそらく作者が女子高生じゃないせい。
 →つぎの作品もおそらく一人称なので、もっとグンと入れるような一人称にしたい。

 

●次回、梗概

 正直、梗概を読まずに実作を読んだ方が楽しいし面白いし正しい評価だと思います。ちかごろ〆切の2日後に講評会とかやってるのですが、実作の読み方がすでに「梗概の確認」になりつつあり、オチも知ってるしあまり面白くない。先生もきっとそうで、梗概からたくさんジャンプアップした実作のほうが楽しいだろうなと。
 つぎは、すべての人間が18歳で寿命を迎えてしまうディストピア世界。どろどろしたものは書けないのでまたやはりふんわり系になりそう。


 

・参考文献

ゼロからわかるインド神話

ゼロからわかるインド神話

 

 ・イラストいっぱいで、神話や叙事詩のあらすじも書かれていてありがたい。(資料はまずあらすじを読もう)。この本だけ買ってしまう。

ラーマーヤナ

ラーマーヤナ

  • 作者: エリザベスシーガー,鈴木成子,山本まつよ
  • 出版社/メーカー: 子ども文庫の会
  • 発売日: 2007/01
  • メディア: 単行本
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・ 子ども向けに書かれた本。子ども向けだが結局、最後のシータの貞節うんぬんの話は書かないといけないので、ラーマは許されない。でもラストはシータとラーマが仲直りしてハッピーエンド。ほぼすべて目を通す。

新訳 ラーマーヤナ (1) (東洋文庫)

新訳 ラーマーヤナ (1) (東洋文庫)

 

 ・ガチ翻訳。全7巻くらいある。1,6,7巻目をちらみ。

第5回ハンセイ

・作品を提出した

 

 

 

・ハンセイ
 しにそう。疲れがひどかった。
 なんだか打ち切りエンドのようになってしまったのがつらみある。
 結果として、あまり短編向きでないのを書いてしまった、というのが答えかもしれない。こういう枚数違いをやってしまうのは久しぶり、のような気がしないでもない。30枚を90枚に無理やりのばして失敗、というのはよくあるが、最初からプロットを立てて失敗というのは久しぶりかもしれない。
 原因としては、あまりにもぱっとプロットが浮かび上がってしまい、これ以外思いつかない状態だったのが原因かもしれない。こんなぱぱっと書きたいものができたのは本当に久しぶりなので、そこから抜け出せなかったのかも。(いつもは全然ネタが出てこず、うううと言いながらネタを絞り出すので、展開が多くて困ったことがない)。最初に梗概を提出しているので、完結できないフラグその1として、梗概に書いていないことをたくさん書き始めると完成しない。当然と言えば当然だが、設計図に書いてないのだから、脱線する。
 総じて、いろいろ悔しさが残る作品になった。後にも何も残らないかなと思ったが、いろいろ反省点はできた。少なくとも、無理やりでもラストを変えて完結させて(終)をつけられたのは良かった。これがないと本当につらい。(人前に出せない)

・前々回の作品が10566字、前回が14559字で、今回が17042字なので、確実に増えてるのはよかった。前が少なすぎというのもあるが。

・記録

10/22(Mon) 4,957字 このあたりで『ビブリオバトル部』を読む
10/25(Thu) 5,662字
10/27(Sat) 8,669字
10/31(Wed) 12,268字
11/3(Sat) このあたり、風邪をひく
11/4(Sun) 14,584字
11/7(Wed) 16,780字
11/8(Thu) 19,000字(徹夜)
11/8(Thu) 夜 17,000字(ラストを変えて削る)

 

※追記

・このあと、脳が疲れたからか、文字が読めなくなり、人の話を聞いてもさっぱり処理できなくなり、それが1週間くらい続いたので、本当に疲れていたらしい。体重も過去最低に近づきつつある。毎回こんなことやってたらもたないので、改善したほうがいいが、いまだに実作・梗概のスケジュールが立てられないのがよくない。

・締め切りの後に意見交換会をやったので、まあ休む時間もなかったわけだけど……。

・眠っても体調が回復しない、というのが怖かった。寝る前に「10時間寝ても、たぶん寝る前と変わらないな」というのがわかる。怖すぎうち。自分としてはそんなに体力を消耗したつもりはなく、徹夜はしたけれど、そんなにという感じ。ただ2週間ほど「これはヤバい」と思っていたし、自分にプレッシャーをかけすぎた。大学の研究で徹夜して以来じゃないだろうか。

 

 

参考文献

・疲れた。

 

・SFマニア(初心者?)女の子の話。ゲンロン創作講座のことが書かれている。

 

翼を持つ少女 BISビブリオバトル部

翼を持つ少女 BISビブリオバトル部

 

・SFマニアの女の子がビブリオバトル部に入部する話。
 これから書こうとしていることが大体書かれていた感じ。もういいか感ある。

●どうもこういう話で、キャラごとに好きなジャンルが違う、というのはよくあるらしい。語り部の男はノンフィクション好き、ヒロインはSF好き、ほかBL好きの女の子。
● やろうとしていたこと→それぞれの視点で書くこと。でもあまりうまくいってない感じがある。
●大量に出てくる本のタイトル。本紹介ものとしては理想。内容まで書いているのだけど、自分はいまいちよくわからない。ではなにを書けばいいのか?
●現実にとても近く書いている。が、togetterの名前まで出てきて、ちょっと現実に近づけすぎの気もする。

外国人差別、いじめ、ほかいろいろの暗い話もある。
● 「 他の人の趣向を蔑んではいけない」。「ネタばれはどうなのか」。ビブリオバトルはチャンプ者を選ぶのではなくチャンプ本を選ぶ、「競ってはいるが一人でも読みたいという人が出てきたらそれで成功である」。など、ティーン向けの教訓的なのがよくある。
●こういうのでだいたい思うのが「高校生が頭良すぎる」というのがあるのだが、自分自身、高校時代の自分の頭がパーだと思い込んでいるふしがあり、どうかわからない。

●総じて、本に興味を示す子供が増えそうな、良い本だったと思う。いちばん良いのは「オタクになっていいんだぜ」というところだと思うが、私自身がオタクじゃないのでよくわからない。10年前に読めば違ったかもしれないが。ただオタクかどうか迷ってる時点でオタクじゃない気がする。そして自分はオタク(専門家)にならないといけない立場だというのに。

●これから考えられること。オタクはレベルがあっていい。ただ、オタクであることにコンプレックスを持っている子はいるが、オタクでないことにコンプレックスを持つことはあまりないのではないか。どちらかというと、「好きなことがみつからない」とか「何者かになりたい」とか。

 

 

 

・おなじみの読書ギャグ漫画。あらためて読んで、面白くて笑う。なんでこんなに笑うのか。 

 

・実は読んだことがない。 

 

さよなら妖精 (創元推理文庫)

さよなら妖精 (創元推理文庫)

 

 

来たるべき読者のための「初めてのSF」:梗概感想

・前回に続き、各梗概の感想などを書きました。言及する作品選出にとくに意味はありません。(書けたところから。全部で27梗概……)。後に他作品も追記していきたいですが、すべての作品への言及は難しそうなので、あまりご期待なさらず。

 

※勝手な感想なので、こんなこと言ってるなぁという感じでお願いします。

※SF初心者。あまり良い悪いを言うのが恥ずかしいので半分妄想があります。

・作品いちらん

・前回テーマの感想いちらん(26作品)

 

 

 1.ナンバー・オブ・マイ・ルート
 ループもの。今回の課題はループものがかなり多い気がします。やはり皆さんのSFファーストコンタクトはタイムトラベルかループなのでしょうか。
 前半の、すごくヘンテコな部分でループしてるのが笑いました。本筋じゃないのですが、好きな人(?)に何回も会うためにループしてしまうというのが新鮮です。別作品で告白までいきそう。ループはたかし君の意図じゃないのかもしれませんが、このまま何回も挑戦してほしい。で何回も失敗してほしい。ループを起こしている人たちも応援してるかも。

2.ちきゅみバーガーをおひとつ

・良い。回想じゃなかったらあまり面白くならなさそうです。「地球を救った」という事実を追い、「どうやって地球を救った?」の謎を探す旅。地球と少しずつずれた月。月を舞台にするのもいいですが、少しずれた地球にするのもよさそう。つまり同じ地球、同じ日常のはずなのに、店員に月見バーガーはまったく通じなくて、店員は少しおかしくて、「はい」が「いいえ」になって、完全にムーンサイド。ムムーーンンササイイドドへへよよううここそそ。ご一緒にポテトはよいです。いらっしゃいません。店内でお召し上がりじゃないですよね? 定型句が多いファーストフード店と相性がいい。ムーンサイドは一見めちゃくちゃなようでいて、「はい」が「いいえ」になってる、という法則性があるから面白いんだなあ。これが本当に不条理でめちゃくちゃだったらあまり面白くない。ムーンサイドはホラーっぽいですが、パステル調の絵本みたいにすれば意外とホンワカでかわいい(かも)。

3.外から失礼します

 転生もの。Rちゃんは短命なのでしょうか。で「欲望」は「長生き」という感じですね。ラストに向かうなら、ここら辺りの短命の理由が欲しいところです。長生きのために色々がんばる……というストーリーではなさそうですね……。
 関係ないですが、自分がメトセラを書くときに面倒くさいと思うのは、メトセラは長いあいだ生きて、だいたいの目的が達成されてしまっているので、なんとなく話のゴールが決めにくいことです。1000年生きてたら大体のことはやっちゃってるか、という。で、目的は「死ぬ」とかになってしまう。そこはがんばって昔の約束とか一族の目的とかを引っ張ってくるのですが……。

4.惑星間VR婚活、はじまります。
 なかなか挑戦的な設定です。しかし、惑星間の移動が当たり前となった時代に、VRの技術がかなり古く感じられるのが残念です。(実際は、惑星間で通信するのも大変な技術なのでしょうが)。すでにネトゲを通じて結婚したりする人もいるので、下手をすると古い話にもなります。VRの名前は変えたほうが良いかもしれません。
 「VR空間で婚約した地球外の恋人のもとへ移住する地球人が続出した」とありますが、VR空間で婚約したら、実際に会わなくていいんじゃないかと思います。VRに詳しくないのですが、そのVRのグラフィックに惚れたんだったらわざわざ会わなくてよくないかという……。むしろ社会問題として、永遠にVRに潜入する人が続出して問題になりそうです。(実際に会いたいとかオフ会したいという気持ちはわかりますが、会うこと自体が問題ではなく、むしろ会った後にイメージが違ったとか犯罪に巻き込まれたとかのほうが怖い。)
 とここまで書いて、この話を惑星間の話にしなくても、10年後の未来とかで(地球内で)起こりそうな話で、未来にする必要があるのかなと。せっかく広大な宇宙が舞台なのに、通信によって広大さが失われています。惑星間の話にするのなら、それならではの話が欲しいところです。太陽系限定なのか、太陽系外まで進出しているのかで話が変わってきますが(宇宙人がいっぱいでてくるとか)。同じ日本人(?)なのに地球と火星は言語が違うとか。
 むしろ、『惑星間の移動』はすごく難しくて、『惑星間の通信』はすごくカンタンという設定にして、「一生会えないけどVR上で恋愛が大流行。結婚するけど子どもはさっぱり増えないので大問題」とかのほうがおもしろくなりそうです。それなら広大な宇宙を舞台にする意味も出てきます。(惑星間でセックスする発明が生まれそうだけど……)

5.想定外の奇跡
 これも挑戦的な設定。トリックSF。少し思ったのは、『「絶対にありえない」「約束を破るな」と、この奇跡の“種明かし”を要求する大量の野次が降り注ぐ。』のが本当かしら、と思うことです。ネタをしこむのはマジシャンの仕事だし、別に炎上しないのでは……という気になります。人が裏工作を疑うのは、例えば試合の八百長とか、テレビ番組のやらせとか、選挙とか、もともと公明正大なものに対してだと思います。それらが「やらせ」なら大変なことです。でもマジシャンはやらせをするのが仕事なわけで、「やらせや!」とは誰も言わないんじゃないかと思います。ネタがあるのが当たり前というか……。ネタばらしが番組の特集だとしても、「ごめん間違えて別のマジックがでた」で謝罪すれば終わりなんじゃないかなと。
 とここまで書いておいて、もし近未来が「マジックにトリックは100%あり、マジシャンはマジックをし、視聴者がトリックを予想する。最後にマジシャンはネタをばらして解答確認する。ここまでがマジシャンの仕事であり、最後にネタをばらさないマジシャンは最低野郎」というのが浸透した世界、なら大丈夫そうです。つまりネタばらしが前提で、どこまでネタを予想できなくしてマジックを演出するかが勝負の世界。現代の価値観とは全く違うので、説明が大変そうですが、おもしろそうです。『偶然』の証明は難しいですし、なかなかカタルシスを得るのも難しそうですが。
 作者はマジックのお話が多いですが、単純に、「悪いマジシャンのマジックを、SF的なギミックであばく」 or 「悪いやつをSF的な能力を使ったマジック(ギャンブル)でこらしめる」など、単純なストーリーも読んでみたいです。(これまでの実作であったらすみません)。前者はドラマのTRICK、後者は冲方丁マルドゥック・スクランブル』に近いですが。関係ないですがマジシャンの前田知洋さんが好きでフォローしてます。

6.マンモス大発生
 マンモス第2段。前回からさらにパワーアップしてマンモスが登場! という触れ込みがつきそう。
 改稿してパワーアップしているのはすごいことです。マンモスと科学の組み合わせがより面白くなってる気がします。意図的に現代もの(youtuberとか)を入れているのか、ミスマッチを狙っています。近未来と大昔、科学的と非科学的なもの、アナログ(剣の必殺技?)とデジタル、どんどんずれていく感じもいい。正直、自分は評価が難しいのですが、突き抜けていくほうがいいのかな。ただこういう不条理(?)な感じがどんどん続いていくと、自分はよく読んでて飽きてしまうので、時々は論理的な、ときどきはマトモでオーソドックスな展開も欲しいところ。途中でマンモスがやられて「やったか!?」的な展開。あと、1回マンモスが駆逐できたと思って数ヶ月後、マンモスが復活するとか。

10.啓、摩天の龍より指先の君へ

 SF的ギミックはさすがの一言。『ヨハネスブルグの天使たち (ハヤカワ文庫JA)』(宮内 悠介)を思い出しますね。高層マンションだかで、アンドロイドが毎日飛び降りをする話。
 ピアスを取るために粗製クローン(クローン?アンドロイド?)をよこすのはさすがにやりすぎな気もしますが、お金持ちの道楽なのかしら。もう少し理由が欲しかったですね。決行当日前にその理由をバラしちゃって、仕返しをするために階段をつくるでもいい。せっかく両親の話が出てきているので、両親に手紙は渡せたけど、全然読んでくれなかったでもいい。そのあたり、都市以外に『テーマ』があるかどうかな気がしますね。つまり、泡沫城市とタワーとの格差がテーマなのか、それ以外なのかどうか。
 やっぱり都市全体がテーマなので、オチも都市全体がいいかもしれません。(長編であればこの都市は魅力的なアクセントなのですが。「泡沫城市シリーズ」とか。短編連作の1話になってしまっている)。百十九龍城が取り壊される予定があるとか、小惑星タワーからゴミがガンガン降ってきて困ってるとか。前作の『すみれの天蓋』は街全体テーマで、オチも街全体の話でしたよね。
・第3回星新一賞グランプリ『ローンチ・フリー』(佐藤実):宇宙エレベータを人力で登っていくお話。血界戦線ルート66
 意見交換会でのお話:ガール・ミーツ・ガールが書きたかった。バイク最高。

11.殻の内側に住む子供たちは
 ロボットSF。意識したかどうか、カレル・チャペックの『R.U.R』を思い出しますね。それくらい普遍的なテーマということですが。これが始まりと言えば始まりなのかも。
『アンドロイドもドールも人間の記憶を転写され、工場などで作業を行う。アンドロイドやドールへの記憶転写は刑罰として行われるということを二人は知っていた。』というのがよくわからないのですが、犯罪者が関わっているということでしょうか。①何かの事件で犯罪者になった人間が、記憶をロボットに移植(≠ 転写)させられるということか、②それとも記憶の転写自体が違法ということかな? ①なら少し面白そう。ロボットはみんな元犯罪者。どちらにしても、その設定は梗概にびしっと書いたほうがいいですね。おもしろそうな設定はアピールしたほうが良いです。
 『「わたしたちに、わたしたちの記憶のオリジナルの情報を渡してほしい。わたしたちはオリジナルをどうこうしたいわけじゃなく、(略)わたしたちがどう生き、壊れていくのかということを知ってほしい」』というのがよくわかりませんでした。オリジナルは人間なのかしらん。オリジナル(人間)に、自分達ロボットの人生を見てくれということかしら。『刑罰』というのは、オリジナルに対しての罰なのか、コピー先の人格に対しての罰なのか不明ですね。別に記憶が転写(コピー)されても、オリジナルには関係ないですからね。転写じゃなくて記憶の移植だったら別ですが。
 もう少し梗概をまとめて、つきつめると面白そうです。しかし、オリジナルにこだわっていたのに、ラストは記憶をコピーしまくるというのは矛盾している気がします。よけいオリジナルがわからなくなりそうですが。

12.天上帝(オーバーロード)彼女
 転校生、女子高生、ウッ、頭が……(自作)。それはともかく、何回もやり直す能力があるとして、作中でも言及がありますが、どうやって窓際に空席を用意するのかしら。どうやって飛行機を飛ばすようにするのかしら。彼女が何回も何回も裏工作をがんばっているということでしょうか。大変そうです。津波・隕石・台風とかなら下手すると何年間スパンでやり直しが発生しそうですね。そうしたら彼女の反応はもっと「やったーー! 30回目でやっと成功ーー!!」的なことになりそうです。いやその現実も巻き戻してクールを装っているのよ、本当はこれが31回目なの、なら萌えます。
 この話の面白いオチを考えるのは、既存作品がいっぱいあって難しそうです。彼女しか持てない気持ち・事情に焦点を当てるしかないかも。人生何回もやり直しすぎてすごく老けてるとか。(飛行機に乗ってる乗客を殺す選択をしたのは私なのよ、私がわざとあの飛行機を整備不良にしたの、的な)
 ふつうループものは、ループを書くのが普通だと思うので、(つまり小夜子視点で書く)、俺視点で書くのは難しそうですね。読み手がループを体験できません。よほど小夜子が「あなたと話すのも6回目なのよね」「次にあなたはこう言うの。」「前回はあなたの動きが遅くて失敗したから今回はしっかりして」的な、ループを意識させるものを書かないと難しいかもしれません。(そして、実は「俺」にとってもこれが20回目のループだったり)。

17.糞尿の交わり
 ドイヒーな作品。これが読者とSFとのファーストコンタクトでいいのかと思う作品。子どもってうんこ好きだもんね……。ギャグ?としては臭気が強すぎる気がするので、もう少し臭気を抑えて、スメル人と外交するために試行錯誤する地球人、でも勘違いするスメル人、だんだん地球人に合わせてくるけど複雑な事情のスメル人、を書いたほうが良いかもしれない。今は臭気の強さ一直線ですすもうとしているので、(突き抜けるのもありですが)、もう少し展開に変化球がほしいです。地球人の文化も意外といいよね、のような。地球でも臭気がファッションになるかもしれない。最後スメル人に、「すんごく臭いです」と言ったら意外とあっさり聞いてくれて良好になった(すごく爽やかな匂いも出せる)、とかでもいい。
意見交換会で出てきた作品。
 星新一親善キッス』 宇宙人チル星人は口がおしりにあって、おしりが口で。
 筒井康隆最高級有機質肥料』:ミトラヴァルナ人にとって、人間の排せつ物が最高級の料理らしい。

18.わたしとあなたときみとぼく

 ほぼ全身不随の「私」が、機械の体を動かすのではなく、人間の体を乗っ取って動かすというもの。類似作品が思い当たらないのですが、何かありましたっけ。
 かなり難しそうな技術ですが、どうやって使うのかしらん。やはりヘッドギアのようなものを被せて使うのかしら。軍事目的で何に使うのでしょうね。ただ、脳を損傷した青年の体を動かすと、脳が復活するのでしょうか。青年の脳が損傷してたら操ることもできないんじゃないか、と思ったのですが、「私」の脳が直接からだに命令を出すのかな。また、のっとった体のほうの意識と、「私」の意識が混ざったらどうなるのでしょう。体の動き的に大変になりそう。そこらへんの仕組みをしっかり突き詰めれば、特に大きな事件を起こさなくても、一本の話になりそうです。

19.宇宙駆ける釣りケーキ
 ジュブナイルSF。児童文学のセオリーに『行って帰ってくる』がありますがそのような感じ。スケールが大きいのが良いですね。最近の子は秘密基地を作るのでしょうか。マンションの裏庭にサークル(と宇宙船)があったら、わりと大騒ぎになる気がしますし、山かどこかにあるほうが冒険感が出ると思います。少しオーソドックスすぎる気もするので、マサルかヒサシにダメなところがあり、最後に成長すると良いですし、最初ふたりが仲が悪いとかでも面白そうです。(ヒサシはケーキが実は大嫌いとかでもいい)。どうでもいいですが、こういう児童文学で小学生がスマホを使ってたらわりとショックなのですが、そちらのほうが現代的ですし、話が面白くなるかなと思う。私が想像してる子どもと今の子どもは違うんだなあという。(最近の子は釣りするんだろうか)。ふたりが住んでるところが超都会で、自然いっぱいの惑星でオタオタするというのもいい。つまり何かテーマがあるといい。 

 意見交換会の話:成長があるといい。片方は都会住まいで片方が田舎住まいとか、仲が悪いとか。また2人が少しサバイバル術に長けすぎている気がする。(読者が冷める)。ケーキ屋の息子はケーキが大嫌い、両親も忙しすぎるしクリスマスプレゼントはないしサイテーとか、デメリットがあるといい。子どもは異世界で成長し鍛えられるもの。千と千尋とか若おかみとか。

24.暴走ロケットに乗れ!
 タイムトラベル。今回の課題でジュヴナイルものは多いですが、スケールが大きいですね。ただ短編で入るストーリーなのか少し心配です。がっつり書いてしまうと250枚以上になりそうですが、(登場人物も多く、時間も2年以上と長い)、がんばってほしいです。あまり端折ってしまうと児童文学には厳しいし。
(関係ないですが「ジュブナイル」=YA向け、みたいなものなんですかね。少年少女が出てきたらジュブナイルだと思ってました。ちゃんと「ティーン向け」なんですね)
 小学生がウラシマ効果とかわかるのかしらん。むかし児童文学の先生に、「児童文学でのSFの理論はドラえもんくらい簡単なのでいい。空き地に行ったらなぜかタイムスリップしたとかでいい」と仰っていましたが。ここらへんは簡単に説明するくらいでいいですかね。
『タイムトリップが可能になった未来、過去の調査に出向いていたAKIが行方不明になった。過去から未来に戻るすべはない。誰もがあきらめた頃、プロトタイプの恒星間宇宙船が太陽系に現れた。ウラシマ効果を利用してAKIは帰ってきた。五人の子どもたちを連れて。』 ここら辺が最初わからなかったのですが、この文章だけNATSUの視点で書かれてるんですね。(「~らしい」「~という」などを入れてほしいです)。ということは、最初からAKIは、自分が未来に帰りたいがために、子どもたち5人を巻き込んだということになるのでしょうか。。。。AKIがまたジャイアンにボコられそうですが大丈夫かしら。未来人には超謝罪してほしいです。まあ、こういう事故はだいたい未来人の失敗というのが多いのですが……。なにかひとつ、未来でしかもらえないプレゼントとか、見返り(?)があってほしいですね。このままだと本当に巻き込まれただけなので……。

25.人形村の因習

 田舎ホラー。金田一先生が出てきそう。いや金田一先生ほとんど読んだことがないのでイメージなんですが。
 小さなころから育った共同体を出ていくと、自分たちは実験体だった、というのはよくある設定だと思うのですが。彰は人形の体?と入れ替わってるということなんですかね。彰はそれに気づいてない? 村の成人も気づいてないのでしょうか。村外の人形は洗脳されてるのかしらん。体が人形と入れ替わっても本人らが気づいてなければ、あんまり怖くないというか迷惑ではない感じですが。村外に出たあとの、『人形たちの使われ方』が、このホラーの一番大事なキモだと思うのですが、どうでしょう。例えば戦争に自爆テロ兵器として使われているとかでもいい。臓器クローンとして使われてるでも良い。でダメになった人形は、村に戻ってきて、山の境に並べられた動かない人形の1人が、かつて彰が一緒に遊んでいたお友達とかだったら怖くないですか。
 また、一人称(僕)と三人称(彰)は混ぜると結構まずいです。

26.宇宙にいたって腹は減る
 飯テロもの。梗概でも密造した食事は大変おいしそうです。セクターの食事はわかりませんが、味気ないものばかりなのでしょうか。劣悪?な食事ばかりだと、よけいに密造した食事がおいしく見えそうです。(それは飯テロものとして良いのかどうかわかりませんが。何でもない飯がうまそうに見える)
 飯テロものでも、ただ飯を食べるだけでなく、宇宙人との食事に意味を持たせようとするのがすばらしい。実在しない宇宙料理も、再現性はともかくとして、がんばってほしいですね。タイトルはわかりやすさ◎ですがもう少しひねって良いかも。

 

 

 

 

 

はじめましてSci-Fiさん、エイリアンより

 自作ハン=セイ。少し小さくまとまってしまった感じがある。長編なら、ほかの生徒もじつは宇宙人だった!(最有力候補は恋のライバルのマナちゃん)というのを入れるのだが、焦点がエリスからブレてしまうような気がしてやめる。話を広げようと思えばいくらでも広げられる気がするが、まとめる自信がない。あとギャグSF?だからといってSF考証がおろそかになっている感ある。ジュブナイル、高校生が世界を救うのが難しいのであまりやりたくない。

意見交換会での話
 エリスの母星では、SFは禁止扱いなのか? あることを知っているのか。上層側なのか、一般市民なのか。これがSFを初めて見た人の反応なのか。レジスタンス側だったり……。地球がわにそういう文化があるらしい。SF原理主義者とかが出てきたり。SF反対派とレジスタンスと穏健派と過激派とSF原理主義者とかもういっぱい。
 SF研究会と宇宙人だけで、ハルヒなんだろうな。っていう。なぜこの学校に宇宙人が来たのか?を突き詰めると、どんどんハルヒになる。SFというワクを表明していくことでハルヒと差別化していく。
 マンガでわかるSFシリーズ(仮)みたい。連作短編で読みたい。最後のひと芝居が気になる。
 惑星間戦争をしているエリスがSFを読んでも、歴史ものを読んでる感じになるのでは? 最初は古いSFを読んで、「これだから地球の文明は(笑)」とか言いつつ、現代のSFに近づいていくにつれ「なんだこれは!?」という感じ。
・非科学的な幻想を抱かせるのは何がまずいのか? 良い未来を見せることで技術を発展することがある。中国とか。
 → 国民は賢くならないで、という独裁政権。プチ鎖国状態なのでほかの異星人のことも知らないでほしい。自由な未来も、歴史改変も、ニセ科学技術も知らないでほしい。古い社会主義共産主義のような考え方。
 SF忘却ビームをくらった地球の話。だんだんとSFを思い出していく話。かなり玄人向けになりそう。玄人向けに、ひとりくらいSFにうるさい部員がいてもいい。ハルヒが好きな部員がいてもいいかもしれない。

 

参考文献:
サマータイムマシンブルース』:戯曲、映画。SF研究会がタイムマシンを作る話。
すこしふしぎな小松さん』(大井昌和):SFを紹介していくマンガ。あらすじは完全にかぶってそう。

『メガゾーン』

プロジェクト・シャーロック(2017年日本SF傑作選)

・読むのに10日くらいかかった。正直、短編集は毎回、設定と登場人物を頭にインストールしないといけないのでしんどいのだけど、ノルマ化して通勤で毎日読む、というのには向いている。ただどうしても読めない作品はパスしたほうが良いかも。2017年に発表されたSF作品の傑作選。(森)は大森望氏選、それ以外は日下三蔵氏選。

 

・上田早夕里「ルーシィ、月、星、太陽」
 よかった。イルカ(?)のような主人公、じつは人類が遺した人工生命体。メトセラっぽくて好き。連作短編のはじまりのようなもの。なんというか、こういうSFがちゃんと商業に載っているのが嬉しい。旧人類がイルカにどんな処置を施したか。AIとの対話。

著者は小松左京賞でデビュー。『華竜の宮 (ハヤカワSFシリーズ』で2011年日本SF大賞受賞。最新長編『破滅の王』、最新短編集『夢みる葦笛』は大傑作らしい。

夢みる葦笛

夢みる葦笛

 

 ・円城塔「Shadow.net」(森)
 攻殻機動隊小説アンソロジーの中の一作。かっこよかった。何より驚いたのが、2節の冒頭、バトーとトグサが登場して物語がスタートするシーン。すごい密度のセリフの応酬で、かっこよかった。自分がふたりのイメージができてるからそう思うのかもしれないけど。もちろんCVは大塚明夫さんと山寺宏一さん。プロの小説って感じがしてゾクッとした。

◆2

 

「スパム」と助手席の男が訊ね、
「そ、娘の携帯にね」とハンドルを握った男が答えた。「最近多い」
 助手席の男の傍らに「バトー」、運転席の男には「トグサ」という表示が寄り添う。
「あるだろ、お子様向けのフィルタリングサービス」とバトーとマークされた男が言う。「軍事レベル」の攻撃を受けているわけでもないだろうと訊く。
「最近の防壁の更新頻度知ってるだろ」と応えるトグサに、バトーは窓の外に目を向けたまま、狭い車の中でなんとか肩をすくめてみせ、
「ああ、高度人工知能からのラブレターの話ね」
 トグサは「そ」、と短く応える。
「ただのお手紙プログラムだろ」とバトー。「自分が聞きたい話だけをきかせてくれる話し相手。別に人工知能じゃなくたっているぜ、そういう手合は。需要も高い」
「娘にはまだ、おべっか使いの人工知能と、自分を心配してくれている人間の区別はつかない」
「それを言ったら、俺たちにだってつかないぜ。去年の、虚偽110番通報の数知ってんのか」とバトー。「通報魔プログラムな。小説でも書いてりゃいいのに、自分勝手な設定で殺人事件なんかを手当たり次第に創作して通報してきやがる。厄介ごとの自動化が進む以上、処理も自動的に、ってな。本物の通報がフィルタにひっかかって問題になったろ」
「旧式の監視カメラからの警報が、『機械的』すぎるっていうんで、中継サーバにハネられて問題になったやつだろ」とトグサ。

 

・小川哲「最後の不良」(森)
 男性向けカルチャー・ライフスタイル誌に載ったという小説。すごい。おもしろいかどうかはわからないけど、ふだん小説?を読まない人向けなのだろうか。「流行」「文化」というもののひとつの答え。そして少しだけ未来の、起こりそうな未来。起こりそう、というのが大事なんだなあ。
 著書は『ユートロニカのこちら側 (ハヤカワ文庫JA)』『ゲームの王国

我孫子武丸「プロジェクト:シャーロック」
 ありとあらゆる状況設定、人物設定、状況証拠をAIにかませれば、どんな事件でも解決してしまうのではないか。警察官がふとした気持ちでアップしたシステムが、全世界に広がっていく。やがて対抗するソフトが現れて……。なんというか、これぞSF!というもの。AIとミステリの愛称はいいらしいが、だれでも思いつきそうだけど、さらにひとひねりフタひねりあるのが良い。(森)
 著者は『かまいたちの夜』のシナリオ担当。本格ミステリデビュー。
・彩瀬まる「山の同窓会」
 ・女性が産卵する世界。それだけでなく、平均寿命が短く、食料は山と海からとるが、文化レベルは現代的。女性は出産のたびに老けたり金髪になったりし、3回出産するとほとんどが死に至る。男性はどんどん老けていく。おそらく99%の女性が出産に行うが、主人公の女性は一切出産しない市の職員。多くの同級生を看取るなか。(森)
 著者は女のためのR−18文学賞読者賞でデビュー。作品の収録本は『くちなし』。 

「与えられた命を、使い切らないで死ぬなんて恥ずかしい」
「誰とも交わらない生涯に何の意味があるの。あなたを産んだ母体がかわいそう。全体に貢献しない自分勝手な生き方は醜い。産めば産むほど、尊くなる。生命として、上等になる」

 「交尾も産卵も、ものすごく幸せなことなのに、それがわからないのは不幸だと思う」

(この友人は主人公を責めているわけではなく、なぜ自分がその枠から出られないのか?と困惑している)
 作者は何を何を言おうとしているか、考えない方が楽しいかもしれない。(何も言おうとしていない場合もある)

くちなし

くちなし

 

 ・伴名練「ホーリーアイアンメイデン」
女性からのお手紙型式。姉が人を抱擁すると、その人は性格がまるきりかわってしまう。

 著者は『少女禁区 (角川ホラー文庫)』で日本ホラー小説大賞短編部門を受賞。SF傑作選の常連。SF作品集の刊行が待たれる。

・松崎有理「惑星Xの憂鬱」
 惑星の枠から外れてしまった冥王星と、冥王星大好きの男の子の話。こんな方がいるんだなあ。
 著者は『あがり (創元SF文庫)』で第1回創元SF短編賞を受賞。
新井素子「階段落ち人生」(森)
・小田雅久仁「髪禍」(森)
 怪奇小説。人の「髪」をめぐっての話。黒髪は本当にこわいよね。金髪が怖くなるとかあるんだろうか。金髪が排水溝にたまっててもやはりきれいじゃないのだろうか。

・宮内悠介「ディレイ・エフェクト」(森)
 現代の東京に、戦時中の東京の風景が重なるように現れた謎の現象。親子3人の一家は、曾祖父母とともに暮らすことに。しかし向こうの声は聞こえるが、干渉はできない。すごかった。設定も面白いし、こういう夫婦関係のビリビリ感、好きなんだろうか。設定だけじゃなくてドラマが大事なのだなぁ。
 おもしろいと思ったら、この作品が著者2度めの芥川賞候補だった。ひええ。『ヨハネスブルグの天使たち』『彼女がエスパーだったころ 』最高でした。

加藤元浩「鉱区A-11」
 マンガ収録。たった1人で惑星に住んでいた宇宙飛行士が死亡。無数のAIたちがいたが、誰が殺したのか……。SFミステリのお手本。作者は『Q.E.D.証明終了』の方。ミステリでのマンガと小説両方で活躍。

 

・ほか

横田順彌「東京タワーの潜水夫」
眉村卓「逃亡老人」
八島游舷「天駆せよ法勝寺」(第9回創元SF短編賞受賞作)
酉島伝法「彗星狩り」(森)
筒井康隆「漸然山脈」
山尾悠子「親水性について」(森)

 

・2017年SFの注目作。

小川哲『ゲームの王国』 宮内悠介『あとは野となれ大和撫子』『カブールの園

宮沢伊織『裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル 』 樋口恭介『構造素子』

津久井五月『コルヌトピア』 赤野工作『ザ・ビデオ・ゲーム・ウィズ・ノーネーム

湯葉重力アルケミック (星海社FICTIONS)

伊藤計劃トリビュート2 (ハヤカワ文庫JA)

誤解するカド ファーストコンタクトSF傑作選 (ハヤカワ文庫 JA ノ 4-101)

巨神計画 上 〈巨神計画〉シリーズ (創元SF文庫)

攻殻機動隊小説アンソロジー

 

攻殻機動隊小説アンソロジー

攻殻機動隊小説アンソロジー

 

 

円城塔『Shadow.net』
 年刊SF傑作選で読み。やっぱりアンソロジーの中でも突出してSF感がはんぱない。すごい。

冲方丁『スプリンガー』
 わんことおじさん刑事の話。著者は『マルドゥック・スクランブル』の方。

秋田禎信『自問自答』
 少佐が撃たれ、生死不明の境に見た明晰夢のはなし。こういう感覚がない話を作るのはめちゃくちゃ難しい。『感覚がない』イメージをするのはとても難しい。『感覚がない』とばかり言うよりは、具体的なイメージに落とし込んだほうがいいかもしれない。著者は『魔術師オーフェン』の作者。

三雲岳斗『金目銀目』
 少佐の影を追う女性SPの話。著者は第5回電撃ゲーム小説大賞(いまの電撃大賞)銀賞でデビュー。日本SF新人賞、スニーカー大賞特別賞など。

朝霧カフカ『Soft and White』
 どこかでお名前を聞いたと思ったら、文豪ストレイドッグスの原作者。作品は読めなかった……。

知性化機械と少年 リライト

・講座の受講生の梗概を自分なりに書いてみました。(作者様確認済み)

・元となった梗概

 

どちらから読めばいいのかは……情報量は同じですが、やはり元の梗概から読んだほうがいいかも。

・元の梗概が少し読みにくく、アピール文にいっぱい面白そうなこと書いてるのにもったいないなぁ……と思うことがあり。素材はいっぱいあるので。

・人の梗概をリライトするの、作者さんにインタビューしないと色々わからないし、大幅にアレンジしても、別にその実作が書けるわけでもないので微妙な気が……。うまい人の梗概をリライトするのは勉強になるかもしれない。(元の梗概を何回も読み直さないといけないので)

 

★★★

 

 『こんにちは、シンイチ、それとヨシタカ。こちらは狭くて暗くてタイクツだ』
 大学院生の信一は、指導教員である金沢夫妻のもと、理想脳式のAI、グノーシスを研究していた。通常、人の脳を大型計算機上に再現する理想脳<グノーシス>は、他のコンピュータと比較して爆発的に計算が早いが、臨界点を超えたところで原因不明のうつ病を発症し、自ら機能停止を起こしてしまっていた。しかし、信一と金沢夫妻が管理しているグノーシスはちがった。グノーシスが人格をもち、通信機を通して人間と対話を行い、家族の一員としてコミュニケーションを図ることで、例外的に精神が安定していた。とくにこのグノーシスは信一と、夫妻の息子である小学生の義隆と仲が良く、よく3人で通信機を通してやりとりをしていた。グノーシスはセンターに安置された大型の計算機でありながら、家族の一員であった。

 幸せな生活が続いていたある日、金沢夫妻が何者かによって殺害されてしまう。現場には壊れたグノーシスの通信機が残されていた。グノーシス反対派による犯行と思われたが、犯人は見つからない。以降、息子の義隆はふさぎこみ、さらにグノーシスに依存するようになる。
 3年後、信一は研究者仲間の女性と結婚し、義隆を養子としてひきとることにする。喜ぶ義隆だったが、今度はその養母が何者かに暴行される。義隆は、その犯人が、両親を殺したグループと同一犯だと確信し、グノーシスの通信機を持って家出をする。数日後、グノーシス反対派の大量死亡事件のニュースが信一の耳に入る。

 幼い義隆が彼らを殺したのだろうか。いや、義隆はあのグノーシスによってそそのかされ、殺人に手を染めているのかもしれない。グノーシスはネットワークを通じて作業用機械を起動させることもできたが、それには人間の承認が必要だった。グノーシスが通信機を通じて義隆を誘い、反対派を消しているのではないか。不安に思った信一はグノーシスと通信を行う。グノーシスは、「自分の製作者や、義隆と信一の大切な人を奪った人間を殺す。義隆と信一を守るために、家族以外のすべての人間を殺して機械だけの世界にする」と告げる。グノーシスは復讐こそが、人間社会にとって合理的で必要なことだと考えていた。

 信一はグノーシスが置かれた研究棟へと向かう。グノーシスは様々な装置で抵抗するが、家族である信一を傷つけることはできない。最下階、大型計算機がずらりと並んだ部屋に、義隆もおり、家族であるグノーシスを守るために信一に抵抗する。グノーシスは最後の抵抗に冷却用の液体窒素を放出するが、信一はすんでのところでグノーシスの機能停止に成功する。液体窒素によって信一の体がボロボロになるなか、義隆の体からも金属の筐体が見え始める。じつは義隆こそがグノーシスの一部であり、義隆が外部情報をグノーシスに送っていたのだった。グノーシスは、人型アンドロイドとの対話を通じて精神を安定させていたのである。グノーシスの機能停止により、義隆の機能も同期によって停止する。信一を失いたくない義隆=グノーシスは、最後の力を振り絞り、信一の体を抱えて脱出する。義隆は、途中からグノーシスと自分の人格が離れていき、家族を守りたい衝動と理性がぶつかって苦しんでいたと言う。信一は機能停止していく義隆を抱きしめ、グノーシス研究の礎になることを誓う。

 (1200〜1400字程度)

 

グノーシスがどういうものかあまり想像できなかったので、キャラ化しました。最初からグノーシスを喋らせることで主役がパッとわからせるようにしました。また、グノーシスをキャラ化することによって、義隆=グノーシスであるのをバレないようにしていますし、グノーシスの家族っぽさも出てるかなーと思います。

※ 早苗と玲子はカットしてしまいましたが、家族愛を強調するために早苗はいていいかもしれません。実作では全員書いてよいと思いますが、梗概で冒頭から6人の登場人物が出てくるのは少し多いです。よほど特徴的なキャラでない限り、そもそも1200字で6人は多い気がします。

※端折ってしまいましたが、もう少し、義隆=グノーシスの伏線を梗概で書いたほうがいいかもしれません。途中の展開。

※梗概では義隆がちょくちょく家に帰ってくるのですが、(伏線にはなるかもしれませんが)、あまり緊張感が出ない気がしますし、義隆を助けるためにグノを止めにいく信一の動機も深まります。ただやはり、よほどすごいテクニックを使わない限り、途中で義隆=グノ説は見破られそうです。見破られても切なさと健気さで押し切ってよいかもしれません。

 

※テーマである『魂は計算機と体のどちらにあるのか』『制限された機械はどう行動するのか』をもっと書くためには、やはり最初から義隆=グノがわかっている時点で書いたほうがたくさん書ける気がします。(あるいは、そのプチ叙述トリックを冒頭につかって、物語のキャッチに使うとか)。自分もこのテーマが面白いと思っていますし、外部装置アンドロイドという設定も面白いのですが、いかんせん叙述トリックを入れてしまうと大半を隠さなければいけません。義隆=グノが判明した後に、書けることがいっぱいありそうです。(だんだん義隆とグノーシスの感覚が離れていったとか、途中から体と脳のズレがおかしくなってきたとか、家族と接する機会の多い義隆と、そうでないグノーシスの意識がずれていったとか)。